笑う伴奏生活

ハンブルクから愉快な共演者達を御紹介します。

ヴェンゲンでリシャール=アムランを聴く。

 カナダのイチオシピアニスト、シャルル・リシャール=アムランが欧州で演奏する時にはソレッとばかりに聴きに行く。演奏曲目が違えばなるべくぜ〜んぶ聴きたいし同じなら開催地で選ぶ(笑)。
 8月18日のリサイタルはスイスのヴェンゲンで。途中プリケツM(声楽・ドイツ)の住むカールスルーエに予定より6週間早く生まれた双子を初鑑賞に寄り道。奥さんも元気だったし2人共メチャクチャかわいー(涙)。ずっとずーっと見つめていたらあっと言う間に真夜中になってしまいました。
 ヴェンゲンってどこー?と何も知らずに電車に乗ったら首都ベルンの美しい街並みを通過し、嘗てブラームスが幾度か夏を過ごしたトゥーン湖のほとりを周ってアルプス登山鉄道に乗り換えて山間の滝や岩肌を右に左に忙しく眺めながらユングフラウが眺望出来るヴェンゲンに到着しました(感動)。スイスを鉄道で旅するってこういう事だったのか…と初めて知りました。またぜッッッたい来ます〜(涙)。

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ホテルのバルコニーからの眺め。


 ヴェンゲンの街は小さいながら多くの観光客で賑わっていて、特に中国やスペインの人が多く日本人にも人気があるようです。

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 それなりの険しさの山の中腹にメンデルスゾーンがこの街を訪れた記念碑が建っていました。この夏はよくよく旅先で坂道を歩くな…。

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 秋の演奏会でレーガーが間に合わなかったらメンデルスゾーンにしようかな(単純)…。今日の演奏会もメンデルスゾーン音楽祭の一環で、リシャール=アムランも彼の曲を1曲弾きます。


 曲目が少し変更になっていて、エネスコの組曲第1番が無くなっていた。とすると行くかどうか迷っているルーマニアでの演奏会ではドビュッシー以外は今日と違う曲ばかりになる(ルーマニアの演奏会はエネスコ音楽祭の一環なので彼の曲は間違いなく演奏されるだろう)。聴きたい…どうしよう…。
 それとショパンはバラード全4曲の予定だったがバラード第1番→夜想曲遺作→即興曲第3番→バラード第4番→アンダンテ・スピアナードと華麗なる大ポロネーズに変わっていた。バラード全曲は去年オーストリアで聴けたし最後のポロネーズは未だ聴いたことないし個人的にはラッキー!まぁ特に好きな曲って訳ではないけれど…。
 私の席は2列目の右端。舞台と客席がすごく近くて彼も演奏中もしかすると日本人ビアニスト(ピアニストではない)が来ていることに気付いたかも知れない。或いは今日もビールくれるのかなとか思ったかも(笑)。
 ショパン以外の曲目は超渋く先ずはドビュッシーの忘れられた映像。第2楽章のサラバンドが良かったッ!緊張感の中の静かな流れ。終楽章の「『嫌な天気だからもう森へは行かない』による諸相」ではわがまま娘が家のテーブルの前で悪態をついているようで可愛かった。
 続いてメンデルスゾーンスコットランド幻想曲。恐らくこの演奏会の為に用意したものだろう。こうして聴くとやっぱり良い曲!でも終楽章は集中力が必要だし私には無理だ(根性ナシ)…もし秋にメンデルスゾーンを弾くなら前奏曲とフーガか変奏曲だな…
 休憩中にヴェンゲン在住のピアニストと知り合った。ハノーファーで勉強された方で今は亡き名師ライグラフのお話を興味深く聞いた。

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 第2部開始。もう演奏者が入場しているのに前列のお客さん達が通路を塞ぎリシャール=アムラン氏はその後ろで立ち止まる羽目に。苦笑いをしながらこちらを向いたのは気のせいか。
 隅々まで仄暗い輝きを放つ夜想曲もしなやかに感情が伸縮するバラードも素晴らしかった。特にバラード第4番では結尾部までは感情を露わにしなかったがそれがより悲劇的に響いた。
 アンダンテ・スピアナードは明るく静かで快く時折眩く輝く。ポロネーズは以前聴いたベートーヴェンのロンド同様冒険小説を読んでいるように終始ワクワクした。やっぱりこの人の演奏大好き!
 アンコールは春にリヨンで聴けなかったシューマンアラベスクとラモーのなんか。ラモーは比較的詳しいつもりだったが知らない曲だった。
 終演後サッポロクラシックを持って楽屋へ。「いつも有難う!君をがっかりさせてないと良いんだけど…。」
まさかー!
「ラモーどうだった?バレエ音楽を自分で編曲したんだけど…。」
(道理で知らないはずだ)ムチャクチャ綺麗!
 ルーマニアにも来てくれるの?と言われ、5日後のワルシャワには行くことを決めていたけれどルーマニアではエネスコも弾くと言うし決定!その日の夜にチケットを買った。
 …サッポロクラシック進呈。
「これは北海道でしか飲めないやつだね!」
良く知ってるね〜!


 というスイス滞在でした。帰りにはインターラーケンからの電車がいきなりキャンセルされスイス鉄道の印象がドイツ鉄道に近づきました。時間が出来たのでインターラーケンを少し散歩したら街を歩くのは9割が中国人観光客でした。このキャンセルのお陰で早くハンブルクに戻って秋にレーガーを弾くかメンデルスゾーンを弾くか決めようと思っていたのに帰ってから全然練習出来ませんでした。