笑う伴奏生活

ハンブルクから愉快な共演者達を御紹介します。

モーツァルト・コンクール

 1月25日、校内モーツァルト声楽コンクール。例年伴奏を一手に引き受ける歌版おじさん(ロシア)が長期病欠中で、トゥットゥミアライト女(ブルガリア)の育児休暇の代行をしているJ(コロンビア)と私が公式ピアニストをする事に。このコンクール、参加料がかからない上申込締切がコンクール直前なので、毎年大量の棄権者が出るが今年はたった1人。Jの方がフレンドリーな為私は6人だけ共演した。
 昨年まではモーツァルトファンの聴衆の投票が大きく反映されていた為時にあってはならない結果が毎年のように生まれて来た。私も、「カウンターテノールって私好きじゃな〜い!」とか、「衣装が似合わないわ!」などの理不尽な意見を耳にした事がある。頑張って練習して思いっきり歌って、「衣装が似合わないわ。」ではあんまりである。
 事態を重く見た声楽教授陣が変革を試み今年は歌劇場や音楽事務所の職員も審査に加わることになり、フォルティシモ先生(オランダ)は、「今年は正しいコンクールになるよ。」と言われたそうで、それを聞いた彼の門下のYさん(日本)は、「それぢゃあ今までは正しくなかったのかあっ!?」と激しい疑問を抱いたそうである。
 私が一緒に弾いた6人は先ず具合先生の弟子のY(バリトン・中国)。トップバッターの為入賞の望みは極めて薄いが実力を見せた。
 普段歌版おじさんがピアノを弾いているフォルティシモ先生の生徒達はピアニストがいないまま数ヶ月が経過。何故か私が3人も共演することに。『声がキレイ』と人気のY(ソプラノ・日本)は体調が万全ではなく、「変な所でいっぱい息吸っちゃった…。」と残念そう。入試で上手過ぎて目立った1年生のG(テノールコソヴォ)は聴衆の支持が絶大!具合先生も、「素晴らしい!」と声をかけて、歯だった先生は、「私のクラスに来てくれないかしら…。」と呟いた。昨年蚊の鳴くような声でシューベルトを歌っていたT(バリトン・ドイツ)は格段に良くなっていて、パパゲーノのアリアでは演技力も光った。
 歯だった先生の2人の生徒は揃って病気。N(ソプラノ・ウクライナ)、「出だしのアンダンテをいつもより速くして…でないと今日は一息で歌えそうにないの…。」とかなり調子が悪そう。それでも朗らかな態度で立派に歌いきり、舞台裏に戻るや否や座り込んでしまった。もう1人のソプラノL(中国)も風邪で前日の演奏会を辞退したばかり。頑張って歌っていたが『魔笛』のアリアの最後で力尽きた…。
 Gが2位に、Nが3位に入賞し4月の入賞者演奏会に出演することに。歌版おじさんがまだ病気なので演奏会でも私とJが弾くことになりそう。ハリーポッター先生のお達しで、「ソロだけでなくアンサンブル、出来れば4重唱を含むプログラムが望ましい。」だそうだがNが言うには、「テノール2人とソプラノとメゾでどの4重唱をやれっていうの?」とのこと。