笑う伴奏生活

ハンブルクから愉快な共演者達を御紹介します。

オーボエ科の秘書、クラスを見捨てる。

 8月18日、先週フライブルクにくっついて行ったオーボエのF(ドイツ)の卒業演奏会。コンクールで残念ながら演奏出来なかったモリスの『4つの個性』とドゥメルスマンの『ウィリアム・テル幻想曲』、それと彼女が秋から入学することが決まっているパリ国立高等音楽院の入学試験の共通課題だったコロメールの幻想曲を共演する予定。このコロメールが誰も知らなかったけれどすごく良い曲で、私も是非弾きたい!と言ってプログラムに入れてもらった。ドゥメルスマンではフライブルクに着いたものの演奏の機会がなくなって山登りをしてからマヨルカへ休暇に向かったフルートのDも一緒に演奏する。

 ところがDはマヨルカで風邪をもらって来てゲホゲホしながら試験数日前の合わせに現れた。
「大丈夫よ。ワクチン接種は終わってるし念の為毎日迅速テストを受けてるの。」
ということなんだがやはり演奏はちょっと苦しそう…演奏会までに全快すると良いんだけど。
 更にところが前々日にFからメッセージ。
「B(誉め殺し先生)がバイロイトから戻って来られないって連絡が来て、代わりの試験官をジャイアンに頼んだけど、どうか了承してね。それにしてもムカつくわ。」
…誉め殺し先生のオーガナイズにはやはり問題が有ったか。門下は違ってもオーボエのクラスは仲が良く、最後の2年はオーケストラでも一緒に吹いたのに残念。それにしても代理がジャイアンとは…まぁフルートのDはジャイアンのクラスを離れて2年間の変身ぶりを見せる良いチャンスだろう。ふっふっふっ。
 またまたところが前日のゲネプロに来たDが咳をしていたのを目敏に見つけた守衛のキックさん(元キックボクサー)が入構を拒否(風邪の症状のある人は入構出来ないという規則がありまして…)。別な曲で共演するチェロのHも学長に掛け合ってくれたものの規則は守らねばならずDは明日演奏出来なくなった。
 感情的になることの滅多にないFも度重なる予期せぬ出来事に遂にうんざりしたもよう。師匠の落武者先生にも一瞬半ギレ状態で対処。まぁこれだけ事件が続けば仕方ないかも…。
 当日Fは安定した集中力で実力発揮。Dが演奏出来なかったのでドゥメルスマンの代わりに先週フライブルクで吹いたシューマンを急遽演奏した。
 打ち上げ会場も下見をして慎重に選んだ彼女。行ってみたら各席に、『Fの卒業記念メニュー』というオーボエまで印刷されたカードが用意されていた。2週間後に非公開卒業試験を控えたSと2人でずっとずーっと我らがオーボエクラスのオーガナイズをこなして来た彼女。卒業後オーボエクラスはどうなってしまうんだろう。
 彼女は祝いの席で師匠の落武者先生に続いてジャイアンにまでワインを進呈!何故?と思ったが誉め殺し先生の為に買ったものの持て余して面倒くさいから上げたに違いない。私には愛しのビールJeverを6本。有難うございます。


 1週間後彼女はパリで新生活を始めました。またパリで一緒に飲む人が増えた。ふふふ。