笑う伴奏生活

ハンブルクから愉快な共演者達を御紹介します。

フランクお預け

 4月29日、イチオシピアニストのリシャール ・アムラン氏がハノーファーで演奏しましたッ!

 1ヶ月以上前にチケットを申し込んで確認も頂いていたものの、会場が変更になったりしたらしく手元に届いたのは演奏会の僅か数日前。3年前にはチケットを申し込んでから2週間経って、「ショパン協会ハノーファー支部会員限定とさせていただきます。」と返事が来て激怒した過去が有る。少々不信感を抱きつつもハンブルクから1時間ちょっとの街だし友人のピアニストのチャップリン(フランス)を誘って電車に乗り込む。リシャール ・アムラン氏はケベック州の出身なのでチャップリンと同じくフランス語を母国語とする。
 変更された会場は6年前の彼のリサイタルと同じキリスト教会。つい数日前からイベント会場へのワクチン接種証明の提示も会場内でのマスクの着用の必要も取り下げられ、本ッッッ当にひッッッさびさに口の周りをしっとりさせる事なく演奏会が聴ける。ところがプログラムを見たら大いに期待していたフランクの『前奏曲・アリアと終曲』がラヴェルの小品2曲と入れ替えられていてショック!
 気を取り直して開演を待つ。開演に先立ってショパン協会の支部長のご挨拶。しかし会場が教会だけに18時の鐘がなかなか鳴り止まなくて予定外の簡単な曲目解説も聞けてお客さんから笑いが。支部長さん粘ったのだが鐘は鳴り続け、遂にリシャール ・アムラン氏が登場してピアノの前に座ってもしば〜らく続き、彼はニコニコしながら手を拭いたりしながら音が少し弱まるのを待ってやっと弾き始めた。1曲目が静かな
『亡き王女の為のパヴァーヌ』でしたからね。


 そのパヴァーヌは昨秋ダルムシュタットで聴いて深〜く心に残ったので、フランクの代わりとはいえちょっと嬉しい。
 続く前奏曲は僅か2ページの小品だが1つ1つの音が渋く輝いていた。
 『クープランの墓』も期待通りの淡々として且つストレートな演奏だったが会場の残響が気になりだしてイマイチ集中して聴けなかった。そんな中でも本人の集中力は素晴らしい。


 休憩中にはワインが振る舞われ、支部長さんが、
「貴方はきっとイトサンでしょう。絶対そうでしょう。」
と挨拶して下さった。しつこくチケットをせがんだので覚えられたに違いない。
 チャップリンがいかにもピアニストという髪型(シプリアン・カツァリスに代表される)のお客さんを発見し、なんと本人に、
「貴方はきっとピアニストでしょう。絶対そうでしょう。」
と訊ねるという積極性を見せた(ちょっと引いた…)。当たってたけど。
 トイレの帰りにガラス戸の向こう側に待機中のリシャール ・アムラン氏がウロウロしていて、こちらに気づいて手を振ってくれた。


 後半はショパン前奏曲集。1曲毎に新しい登場人物が出て来て1人ずつ楽しい話を聞かせてくれる感じ。やはり残響が多く細かい音型が聴き取り辛かったことをチャップリンも指摘していたがそれでも大満足。


 終演後例によってビールを1缶進呈。今回は年末に1時帰国した際に仕入れてあったサッポロ・クラシック。ひと目見てまた、
「あっ、北海道限定!」
と言われた(笑)。
 今回はプログラム全体の重さを考えてフランクを除いたけれど、7月のフランスでは弾くつもりと言うから家に帰ってチケットを予約した。
 チャップリンもリシャール ・アムラン氏とフランス語会話(2人共母国語ですから当然ですね)。何を話したのかと思ったら和声を学んだのかと訊いていたそう。
「僕演奏聴いたら分かるんだ!」とチャップリンは言っていたけど果たして真偽の程は!?


 という訳で今年の夏は期せずしてフランスに決定。他にも行きたかった街が幾つか有るし、フラフラしてくるつもりです。