笑う伴奏生活

ハンブルクから愉快な共演者達を御紹介します。

モンタナ・テイラーのブルース

 6月8日、オーボエのボーイッシュなC(ドイツ)卒業演奏会。途中病気や研修で卒業を延期したが実力も体力も付けた。入学後初めての試演会ではヘンデルのソナタの途中でバテて座り込んでしまったのを覚えている。


 何と言っても演奏会はマシューズの『モンタナ・テイラーのブルース』で幕を開ける。
 コロナ禍突入期に世界中のホールが閉鎖され世界中が演奏会に飢えていた。次第に観客のいないホールでのライヴ配信やソーシャル・ディスタンスを考慮した演出の歌劇が上演され始め、更に暫くしてようやく観客動員が可能になった頃、ロンドンのクラシックの殿堂ウィグモア・ホールが演奏会のライヴ配信を始めたのである。私も演奏会(を聴く方)に飢えていた1人、各配信をコンピューターの前でウルウルしながら聴いた。
 或る日偶然聴いたオーボエのニコラス・ダニエルの演奏会。見た目はハンブルク音大最寄りのスーパーの店員さん:いつも上目遣いにお客さんを見ながら、「ちゅぅ〜す(さよならぁ〜)」と言うおじさんにそっくりっ!それだけで何故か親しみが湧いたりして。
 ちゅすおじさん…ぢゃなかったダニエルの演奏したディヴィッド・マシューズのこの曲を聴いたらコロナでモヤモヤしていた心がスカーッと晴れたッ!クライマックスで高い高い変イ音が響いた時には頭の真上で大きなシャボン玉が破裂したような気がした。


 直ぐに楽譜を探して買った。絶ッッッ対誰かに吹いてもらう!


 そしてオーボエクラスのグループチャットにライヴ配信のリンク(期間限定だったのでもう観られない)をコピーして誰か吹いて〜!とコメントしたら引き受けてくれたのがCであった。先ず試演会でお披露目して卒業演奏会でも吹くという。やれ嬉しや!
 その演奏会ではもう1曲、ヴァルナーの『3つのロマンティックな小品』を共演したがこれも初めての曲。しかも取り止めがなくて習得するのに時間がかかったオーボエの新しい難曲は5年前のガルのソナタ以来。トシを取ったからか譜読みが遅くなったのか…。でもヴァルナーはこれでレパートリーになったからまたいつでも弾きますよ!


 イエスキリスト先生が間もなく引退されることもあってCは他大学大学院に進学予定。引き続き頑張って〜!

自己満足度数減少の記

 今年も終わりました。偉い先生達の為の校内自己満足大会。


 木管部門の予選ではファゴットを除く7人と弾いた。内フルートが5人なのにドアマン先生もジャイアン先生も都合が付かず欠席。恐ろしい結果がオンギャアと生まれて来るのでは…と思ったが順当な人が通過してホッ。それにしても審査員の方針が定まっていなくてクラリネットのなにそれ教授(去年からめでたく解放されたッ!)が、「ノブエ、みんなどこを吹きたいの?」
と言うから私に訊かず参加者に訊くべきでしょうと言っておいた。


 弦楽器は何年か前からヨロヨロちゃん(ヴィオラ・韓国)しか担当していないが実力者の彼女はスンナリ通過。


 問題は声楽部門。リートの神K先生の強い強い推奨で各歌手は学生との固定のデュオで参加するから私は出番ナシ。それは別に良いのですが予選ではモーツァルトとシューベルトと決まっており、本選では提出された曲目の中きら当日数曲が指定される。そうすると本選直前になって、
「あたし出来ない〜!!!」
が現れるのだ…。結局今年は2人弾いた。中でもソプラノのA(ドイツ)は女性作曲家、しかも定番のクララ・シューマンやファニー・ヘンゼルではなくエミリー・マイヤーやらエセル・スマイスやらめづらしい曲ばっかり。8曲1週間で用意した。いくら良い曲だってそりゃ誰も引き受けるはずないわな。


 木管部門では朗らか君改め飄々(オーボエ・中国)、低弦部門ではヨロヨロちゃんがめでたく1位を受賞した。オーボエ部門の1位はひさ〜びさで誉め殺し先生もイエスキリスト先生も大喜び!


 …それにしても『最優秀歌曲伴奏者賞』が各部門の第3位よりも多くの賞金をもらうのは今年も納得出来ませ〜ん。

魔笛を観た

 学生オペラ『魔笛』を観た。時々共演するS(テノール・中国)が王子タミーノを演じるので招待してくれた。しっしかし彼はどちらかというとドラえもんで王子キャラではない(Sが翻訳して読みませんように)と思うのだが。侍女達の、「こんな美しい男見たことないわ!」なんて台詞も有るんだけど…。
 蓋を開けてみたら王女パミーナもドラミちゃんだった。何故かホッとした。


 過去20年間に『魔笛』は2回学生オペラで取り上げられたのだが、プリケツMも出演した1回目は学生の演出で、同僚のトゥットゥミアライト女(ブルガリア)が、
「面白らせたいんでしょうけどちっとも面白くありません。」
と言い、仮校舎時代の2回目は歯だった先生が、
「もしオペラが乾燥と笑いとセックスだけを求めるなら私は2度と歌劇場には行かないわあッ!」
と叫んだ。要するに2度とも酷い演出だった…。


 今回は中々良かったッ!カラフルな舞台と衣装でまなこを楽しませたし、歌手も実力者が多かった。初演では不調だったらしいSもとても良かったッ!具合クラスのE(ソプラノ・ドイツ)は今回が学生最後の出演になる。侍女その1という地味な役ながら存在感が光っていた。王女役はキャラ的に、
「ひどいっあたしを捨てる気!?」
という感じだったが歌は良かった。


 幕間に白ワインを飲んでいたらなにやら私を訝しそうに見ている人がいる…と思ったら大学の同級生の指揮者だったッ!演出家が知り合いだとか。
 彼はドルトムント在住。「びっくりした〜!びっくりした〜!」と連発していたがここはハンブルク音大。勤めている私がいるのは当然のこと。彼がここにいることの方がよっぽど驚きなのである。
 ともかく彼に会うのはいつ以来かも分からないくらい。演出家との飲み会に便乗してまいりました。

 

 そういえば高校生の頃魔笛を『まぶえ』と読んで散々呆れられ、それがあだ名になった同級生がいたな。

シュチェチンでリシャール・アムランを聴く

 ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番は私の最も好きなピアノ協奏曲ベスト3に入る(他の2曲はと訊かないでいただきたい)。シャルル君のキレイな音であの場所はこの場所はどう響くのかわくわくである。

 事前に主催者からメール。会場4階のショウルームで歴史的ベヒシュタインのピアノの催しがあって、演奏会のチケットをお持ちの方はご招待です!だそうだがポーランド語分かんないし…と思って辞めた。今思えば行けば良かった…。
 そして、「終演後ロビーにてピアニストのサイン会があります。彼のCDをお持ちの方にピアニストがサインします。」だそうです。


 さて、終演後とは?


 プログラムの前半がベートーヴェン。後半はブルックナーの交響曲第6番。演奏時間約55分。


 ………。


 ベートーヴェンが終わったら帰ってホテルのレストランで晩メシ!と思っていたのだがブルックナーも聴かないとシャルル君にはお目にかかれないらしい。2月のチェンストホヴァといい私はポーランドでは演奏会の後にはホテルのレストランに間に合わないらしい。でもシャルル君へのビール進呈式は大事(どこが)だしブルックナーにしては短いし(感覚麻痺)後半も聴くことにしよう。
 開演前に指揮者の王様(ケーニッヒさんという名で王様を意味する)が動画でご挨拶。名に反してホンワカした感じ。英語で手短な曲目解説をしてくれた。ポーランド語よりはずっとずーっとありがたし!


 いざ開演。特にベートーヴェンのような内容の濃い作品になるとソリストが私を見て私を聴いてタイプか作品を通してメッセージを伝えるタイプかはっきりと分かる。第4協奏曲は比較的短い第2楽章を除いて全体に明るさと幸福感に溢れており、シャルル君の演奏は夏の日差しのようにキラキラしていた。次から次へと新しい驚きを楽しんでいるようだった。オケはちょっと響きが直前的でメリハリに欠けて物足りなかった。
 お陰で第1楽章のカデンツァがオケよりもっと交響的に聴こえた。テンポ設定は大胆で且つ説得力が有った。
 比較的短いと書いた第2楽章は叙唱的な手法で前後の楽章に比べて印象が薄くなりがちだが、冒頭のピアノ独奏部が素ッ晴らしかったッ!!!静かだが深い息づかいは悲しみというよりは慈しみの祈りのようであった。それだけに第3楽章がより一層喜ばしく感じられた。
 アンコールはショパンの国らしく嬰ハ短調の夜想曲。いつ聴いても悲しく美しい…。


 来て良かった〜!とワナワナしながら休憩中に携帯電話をオンにしてみたらなんとさっき演奏を終えたばかりのシャルル君がオンラインになっている。まさか返事はくれないだろうと思いつつ、
「ブラボー!ではブルックナーの後で!」
とメッセージを送るとなんと、
「ありがとう!後でね!」
と直ぐに返事をくれた。


 噂のブルックナーはアンサンブルの難しそうな冒頭部。第2楽章は表情豊かな旋律と和声が続いて結構好きかも。王様の指揮は長い曲を明確にまとめていて中々の実力とみた。細身に長い脚で柔軟に指揮をする姿は時にフラダンスのようであった。
 終楽章は次々にドラマが起こって時が流れて行くのだが結末が意外にもあっさりとしていて聴衆も拍手のタイミングに戸惑ったが、ブラボーにスタンディング・オベーションまで付く盛り上がり。


 ホールを出ると扉の正面でシャルル君がサイン会を始めていた。サインが欲しいおにーさんが急いでCDを買って列に並んだ(笑)。私は例によって臨時乗り換え駅シュトラールズントで買ったリュプツァーを1缶持って並んだ(電車が通常通り走っていれば買えなかった訳で…誉め殺し先生を見習って何事も前向きに考えるようにしましょう)。いつも話したいので1番後ろに並ぶのですが隣に深い感動の表情を湛えた女性が長く話したそうだったので今回は彼女に最後尾を譲ることにしました。
 今回も彼は、
「あまり何度も弾いた曲じゃないからちょっと緊張しちゃって…3楽章はもっと練習しなきゃ。少し早過ぎた。」
と正直に胸の内を明かしてくれたから私には早過ぎなかったよと伝えた。明後日のリサイタルに残念ながら行けないと言うと、
「大丈夫!来年の4月にもそこで弾く予定だからその時に来てよ。」
とのこと。それは楽しみ!でもその前にプラハでのグリーグに行けたらその時に!と言って別れた。さあて、あの女性はシャルル君といっぱい話せたかな?
 ホテルに戻るとやっぱりレストランは閉まっていた…。しっしかし!ホテルの隣はなんとビアホール!で深夜まで空いていたッ!喜び勇んで駆け込みオリジナルビールと郷土料理をいただく。1泊だったけれど今回も楽しかった。

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具沢山のジューレク


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豚肉のシュチェチン風

24年ぶりのシュチェチン

 5月29日、再びポーランドへ。国境の街シュチェチンで我がイチオシピアニストであるところのシャルル君(カナダ)が私も大好きなベートーヴェンの第4協奏曲を弾くのです。2日後にはショパン生誕の街(流石ポーランド!読み方が分からない)でリサイタルがありますが交通の便が悪く翌日にはハンブルクに戻れないので涙をゴクゴク飲んで諦めます。これを逃すと12月までヨーロッパでの演奏会が無いようなので平日でしたがイトサン攻撃を跳ね除けて行って参りました。

 シュチェチンは国境を越えて直ぐの街。24年前に1度だけ足を踏み入れたことがあります。当時のシステムでは観光ビザの期限が3ヶ月でしたが1度国外に出ると再入国後また3ヶ月滞在することが出来ました。観光ビザで入国し入試を終えたフルートのナツ菌さん(当時は上の住人さんだった)と元友人Xと共に国境を越えたのです。初ポーランドでした。Xが「だあ〜いじょうぶだあ〜いじょうぶ!」というのでトラムに乗ったら見事コントローラーのおにーさん達がやって来て罰金を払いました(勿論Xに払わせました)。


 前日にシャルル君に連絡したら、
「ホールが素晴らしいよ!」
とのこと。


 さて普段なら乗り換え1回で5時間程度で着くところをこの期間に限ってまた工事の為乗り換え3回で7時間かかるらしい(怒)。ドイツ鉄道は信用ならずロストックでの乗り換えを逃すと演奏会に間に合わないかも知れないので朝7時台の電車に乗った。最初の乗り換え地ロストックの手前で本来の乗り換え駅ビュッツォウを通過するバカバカしさ(怒)。列車は4本全部順調に走り(よろしい)午後3時頃にはシュチェチンに着いた。


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国境近くの乗り換え駅パーゼヴァルクの待合室(淋)


 着いてみると24年前の記憶は殆どなく駅はこんなだったっけ?駅前は?といった感じ。ホテルは古風で落ち着く感じ。
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レストランの写真しか撮らなかった…


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レストラン入口の洗濯搾り機


 演奏会まで時間があるからといって昼寝などして寝過ごしたら大変。目覚ましまでセットして少し休んでから街を散歩する。
 シュチェチンは有名観光都市ではないが街には活気があり歴史的建造物にもあちこちでお目にかかる。
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赤い市庁舎


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このビアホールで飲んだ記憶はある!


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フィルハーモニーホール


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正教会


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な〜んて言っていたらいきなり廃墟っぽい建物が


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しかも隣がパデレフスキ音楽学校だった…


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旧市庁舎


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お城も有ります


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市庁舎広場
小さいけど素敵ッ!


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美しき教会


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ヤコブ大聖堂


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塔に昇るぞ〜と意気込んだらエレベーターでした…


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市全体を見渡すと故郷の五稜郭に良く似ています


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川沿いの散歩道を歩きまくって電車を逃しそうになった(バカ)


 次回は演奏会について。

オケが忙しくて電車が遅れても…

 5月27日、フルートのS(トルコ)修士課程の修了演奏会。学部から一緒に弾いているお馴染みの学生である。ジャイアンクラスの実力者も卒業である。入学後初めての演奏会の楽譜を歯だった部屋まで届けてくれて歯だった先生をして、「彼女きれいね!」
と言わしめた。あれからもうすぐ7年。
 現在デンマーク国境近くのフレンスブルクのオケで演奏しているので合間を縫ってハンブルクへ。電車で2時間かかる。ハンブルクに真夜中に着いたとか夜の練習の後またフレンスブルクに戻るとか、聞いているだけでも私のトシぢゃあムリだ…と思うのであります。或る日などはその上定番のドイツ鉄道の大幅な遅延で朝5時に家に着いたそうで…お気の毒です…。
 そんな中試験の3週間程前に、
「今日から11日間オケ降りてるの。思いっきり練習出来るわっ!」
とまるで夏休み直前のように喜んでいた。でもということは試験直前にはばっちりオケが有るわけで…お気の毒です…。


 曲目は多彩でチェンバロ伴奏でブラーヴェのソナタ、シューベルトの『萎める花』変奏曲、ベリオのセクエンツァ(無伴奏)、シャポシュニコフのフルートとハープの為のソナタ、フェルトのソナタと来て最後に師匠ジャイアンのトゥーランドット幻想曲。
 シューベルトは最後のレッスンでジャイアン先生の提案により各変奏の後半の繰り返しを省略することにしてほっ…。シャポシュニコフはずっとずーっと前から頭に浮かんでいた何の曲だか分からない旋律の謎が解けたッ!フェルトは第3楽章の誰も正しく入れない間奏で完璧に入ってじ〜ん…。練習が思うように捗らなくでも演奏会にきっちりと照準を合わせるのはプロ意識の高さだろうか。
 20時開演で曲目盛り沢山だったから終演後飲める店は近くにナシ…。そこも用意周到にシャンパンとコップを準備していて学校の中庭で盛り上がりましたとさ。

彼は出来ないの?

 或る日ヴィオラのYからメッセージ。入試の為の動画を撮りたいのでシュターミッツの第1楽章を弾いていただけませんか?と。

 ヨロヨロちゃん(韓国)以外のロボット弟子はおじ(ー)さんの担当なんだけど彼は出来ないの?と返信すると私にとって大切な試験なんです。第1楽章だけで他の曲は必要ありません、と。シュターミッツはいつもおじ(ー)さんと弾いてるでしょ?彼は出来ないの?と再度訊くとや〜っと彼はこの日ハンブルクにいないのですと求めていた答えが。仕方ねぇ弾いてやらぁとなった。
 そして撮影当日、


「私達どの部屋で撮るんですか?」


………。


 それはおのれが準備するんぢゃあッ!こんなこともあろうかとコレペティ部屋(響き最悪)を予約しといたけどあんたが予約するべきなのぢゃ!


「私その部屋予約出来ないんです。」


………。


 ぢゃあ他の部屋を取れッ!


 いざ録画。準備もばっちり。態度も良く終了後は丁寧にお礼を言って去って行った。


 数週間後、卒業演奏会でブラームスを弾いていただけませんかとメッセージ。
 貴方の担当ピアニストはおじ(ー)さんでしょ?彼は出来ないの?と訊くと曲はブラームスだけですという答え。曲は問題ないけどおじ(ー)さんは出来ないの?と訊くと試験は29日でFさん{おじ(ー)さん}は出来ません、ロボット先生にも相談済みですという。29日は私も出来ないよというと21日はどうですか?と訊く。


 21日なら出来るよと答えた。もうおじ(ー)さんは出来ないのと訊くの辞めた〜。
 ロボット先生に経緯を伝えると彼女はクラス1ドイツ語が上手で練習熱心で最近急激に伸びて来たとお褒めの言葉。どうやら引っ込み思案らしい。しかし!


「でも僕が彼女から君のことを聞いたのは昨日だよ。」


………。


 ちょっとズルいんぢゃ〜ん?


 大目に見て(これで何度も大失敗しているのに懲りない私)弾いてやりました。本番ではいつになく情熱的でした。


 数日後、
「非公開の試験でバルトークを弾いていただけませんか?」


 もうおじ(ー)さんは出来ないの?と訊くの辞〜めた。