笑う伴奏生活

ハンブルクから愉快な共演者達を御紹介します。

ルチッチ選手のこと

錦織選手の大活躍に沸いた先日の全米オープンテニス(既に遠い過去の話)。女子の部でとても懐かしい名前を見付けた。
第2シード、ルーマニアのシモナ・ハレプ選手を破って16強に進出したクロアチアのミリヤナ・ルチッチ=バローニ選手。32歳のいわばベテラン選手だがデビューは早く、最も印象的なのは1999年のウィンブルドン準決勝で時の女王グラフを苦しめた試合。決勝進出を逃したルチッチ選手は直後記者団に対して言った。
「多くのチャンスを掴んだ。でも、相手の方が良かった。それだけのこと。」
こんな潔い敗者の弁をいつも聞く事が出来たなら!と思ったのを覚えている。

その頃天才少女たちがテニス界を活気付けたがあっという間に消えていった選手も多かった。彼女達は「燃え尽き症候群」と呼ばれた。ルチッチ選手もその後怪我やその他の理由で試合から離れていたが、ハレプ戦に勝利して実に前述のグラフ戦以来15年振りに4大大会の準々決勝進出を決めた後、言った。
「まるで小さな子供のような気分よ。これが初めての経験みたい。」

あの時も今も、正直であり続ける彼女を今後も応援したい。