笑う伴奏生活

ハンブルクから愉快な共演者達を御紹介します。

夏学期卒業演奏会シリーズ 其の四

遂にやって来ました怒涛の四日間・・・。

七月六日。ホルンのツェザール(スペイン)とパパイヤ鈴木(ポルトガル)。
二人ともパッと見はラテン系らしからぬ大人しさ。ツェザールはフルートのアドリア(アルゼンチン)の卒業演奏会で共演して以来何度かご一緒して徐々に面白さが分かっていった。パパイヤ鈴木の昔のあだな其の一は、「ペドロとパブロのペドロの方」という長いものだったが、パブロの卒業に伴って其の二、「どうせ僕なんか・・・」に変わった。入学当初は髪も短く瞳をウルウルさせていたが、時と共にキャラクターがすっかり変わって髪が伸び放題の時はパパイヤ鈴木をも凌ぐ爆発ぶりに。月曜日に練習出来ると言えば、「パーフェクト!」、伴奏譜を持って来たと言えば、「パーフェクト!」、練習室は確保してあると言えば、「パーフェクト!」ということで第四のあだ名はパーフェクトになることが予想されます。
ラテン系金管楽器奏者二人の演奏会ですから会場も盛り上がり、寒い日だったのに打ち上げもテラスで盛り上がりました。ツェザールはスペインの、パパイヤ鈴木はポルトガルのワインをくれました。

七月七日。フルートの手足の長い子(中国)。中国でオーケストラに入団し、今回は卒業演奏会の為だけの十日間のドイツ滞在です。その十日間に公開演奏会とレパートリー試験に挑む強行突破。準備しなくてはいけない曲の演奏時間は三時間を超えます。ピアノ合わせも限られた時間を上手く使わないといけません。しっしかしピアノ合わせ第一日はあまりの暑さに三十分で断念。波乱のスタートでした。
演奏会当日は優美なゴーベールのソナタの途中で雷鳴が轟く悪天候。集中を切らす事無く吹き切ったのは見事でした。お辞儀の度に笑顔でピアニストの方を向いてくれるとても気持ちの良いステージでしたがプログラムの最後を飾った妖精(フルート・同じく中国)との二重奏曲を吹き終えて私に向けられたのは最早笑顔では無く、そこにはやり遂げた充実感が映し出されていました。またちょっと感動。

七月八日。フルートのセンシティブ女(トルコ)。初めて共演した時に一週間前になって二曲弾いてと言ってきたので遅過ぎると言ったら、「なぜそんなに攻撃的なんですか?友好的に言って下さい!」と返された。面倒臭いのでおじさんに押し付けて厄介払いをしようと思ったら、一度おじさんと共演した後センシティブ女は、「もし貴方さえ良ければ次回の演奏会でも一緒に演奏してくれたら嬉しいです。」と言って戻って来た。おじさん一体どんな演奏をした!?
半年前まで全く綺麗と思わなかった彼女の響きが突然別人の様になった。演奏後サンタ先生が、「今日朝から晩までフルートばかり聴いてうんざりしていたけど、それが全部吹っ飛んでしまった。」と言う程の素晴らしい演奏会に!特に燃え上がるようなドップラーの「ヴァラキアの歌」は忘れ難い。

七月九日。声楽の手に優しい(ドイツ)。朗かでフレンドリーで、台所用洗剤のコマーシャルに出て来そうな感じの子なんです。一月前の偉い先生達の為の校内自己満足大会本選では直前になって会場がダブルブッキングされていた為に衣装を慌てて着替えてバスに乗ってショボい会場に移動しなくてはいけませんでしたが、今回も予定していた楽屋が使えず舞台には狭い狭い階段を上らなくてはいけなくなり、おまけに会場隣の練習室で合唱団の練習まであることが判明。ミニパニックに陥った彼女に、「君は上手く出来る!」と周りのみんなで励ましながらの演奏になりました。元々実力者の彼女、プログラムの終盤にモーツァルトの難曲「夕べの想い」を用意していましたが、課題の低音も衰えることなく見事に歌い切りました。

・・・という訳ですさまぢき夏学期卒業演奏会シリーズが終わったのです~みんな凄い良かったッ(涙)!

では次は直後のフルートの仏様の話など。