笑う伴奏生活

ハンブルクから愉快な共演者達を御紹介します。

初ワルシャワ。

徒歩越境もサンタ日本ツアーも差し置いて久々の更新はワルシャワから。ピアニストの癖に42歳にして初めてワルシャワへ。
16年前、日本ショパン協会の推薦を受けながらも参加を許されなかったショパン・コンクールの会場へ或るピアニストの演奏会を聴きに。
あの時参加料が戻って来て落選を知った時に、残念な気持ちと同時に、「これで、『似合わないのに何故貴方がショパンを⁉』と言われなくて済む。」と思った。
昨年のコンクールをインターネットを通して聴き、初めて思った。弾きたかった、ではなく、「聴きたかった…。」と。
そのピアニストは第2位を受賞したカナダのシャルル・リシャール=アムラン。
昨年末の演奏会は尽く売り切れ。やっと手に入れた機会を逃してなるものかと今日の予定を死守した。
会場のフィルハーモニー・ホールに入った瞬間は幾つかの思いが去来して流石に暫し佇みましたね。
前半は謎の電子音が鳴り続け、私達の耳を妨げた。演奏者自身も恐らく過度の集中を強いられた事だろう。

ひたむきに演奏し続けるという事がどんなに素晴らしいか思い知った演奏会だった。

ワルシャワの聴衆は幻想ポロネーズのゲネラルパウゼで咳をしたり、ソナタの第一楽章の後盛大に拍手したりと意外にデリカシーに欠けたが…

大学生の頃尊敬する先輩が言った。「人の心を動かすのはやっぱり人の心だと思うんだよ。」という言葉が蘇って来た。

終楽章を弾き終えると同時に殆どの聴衆が立ち上がって拍手を送った。私はこんな演奏会を経験したのは初めてだった。
ショパン・エネスコ・ベートーヴェンと続いたアンコールは何れも思わず溜息の出る美しさ。
私よりも遥かに若く面識も無いピアニストの演奏にこれ程感激したのは恐らく初めて。今後も楽しみです。