笑う伴奏生活

ハンブルクから愉快な共演者達を御紹介します。

ドレスデンにて。

チェロのお子ちゃまHにドレスデン国立歌劇場でピアノ三重奏の演奏会をしないかと言われた。レーガー没後百周年に合わせて、十年前に一緒に弾いたチェロ・ソナタ第4番を含めた曲目を用意する事に。
ヴァイオリンは同じくハンブルク音楽大学出身のJ。お子ちゃまHと同じライプツィヒのオーケストラで演奏している。彼と共演するのは初めて。スケジュール調整が難しい中、私がライプツィヒに行った(森のくまさんとビールが飲めるから喜んで行った)り、彼らがハンブルクに来た(友達や家族がいるから喜んで来た)り、お子ちゃまHの故郷イェナの市庁舎でドレスデンに先駆けて全曲を演奏させてもらったりと、難しい状況の中では要領よく準備した。
国立歌劇場で演奏会って言ったってロビーコンサートでしょーと何故か思い込んでドレスデンに向かった。主催者の朗らかな女性が控室の右の廊下を真っ直ぐ行くと舞台ですよーと言って私達を誘導して下さった。
・・・舞台裏が嫌に仰々しい。
そして言われるままに舞台に出たら・・・!
まっまさに歌劇の舞台そのものぢゃあないですかッ!四階席まで有るッ!
共演の二人はそんな事とっくに知っていたらしくて音響も良くて嬉しいねーとニコニコしている。
・・・でっでもきっとそんなにお客さん来ないよねー最前列ガラガラだったら録音機置かせてもらおーっと思っていた。
開演数分前、舞台袖に行って最前列の空き状況を確かめようとすると・・・
ほぼ満席。最前列なんて一番端っこしか空いてない。
私は能面の様な笑顔を浮かべながら、「H、今日僕はあがって全然上手く弾けないと思うよ。」と彼の顔も見ずに言った。
さて演奏はと言えば準備の段階であまり自信を持つことが出来なかったものの何故かあがらなかった。恐ろしく難しいけど信じ難く美しいレーガーのソナタも十年前よりずっと気持ちよく弾けました。
もうこんな大きな舞台(実質的な意味でも)で弾く事なんて無いんだろうな・・・。