笑う伴奏生活

ハンブルクから愉快な共演者達を御紹介します。

刺青君卒業す。

 Hに続いて刺青君(フルート・中国)卒業演奏会。 兎に角良く喋るヤツで暫くは近寄らないでーと思っていたが数年かけてやっと少し慣れた。


 何故刺青君かと申しますと…
 結論から言うと刺青をしているからなんですが…


 入学して1年が経った頃、刺青君が冬学期を丸々休むと聞いた。帰省先の中国で交通事故に遭った為だという。大変だ…。
 数ヶ月後、同じ中国の整形ちゃん(フルート)から事故は大したことないらしいとの情報が。取り敢えずほっ。ぢゃあ何でそんなに長く休むの!?どうやら中国に彼女が出来たらしい…。
 サンタ先生のレッスンでは良くフルート以外のテーマで話に花が咲くが、整形ちゃんのレッスンでも会話のテーマがお休み中の刺青君になった。噂では付き合い始めてまだ2・3ヶ月だと言うが…


整「彼は彼女の名前の刺青を彫ったそうです。」
サ「50歳にもなったら全身が女性の名前でいっぱいになるだろう。」


 別れたらどうするんだろうねー消すのかなー消せるのー?高いし痛いよーと会話は続きレッスン時間が短くなっていった。でもサンタ先生何故痛いって知ってるの…?


 それからほんの2ヶ月位後、整形ちゃんに刺青君はまだ例の彼女と一緒なの?と訊くと、苦笑いをしながら首を小さく横に振り、「別れた…。」と呟いた。


サ「刺青はどうするんだ!」


 湖畔の古城の合宿では毎年何かと騒動を起こした。1年目は店も無いドドド田舎と思い込み、ハンブルクから大量の食料を持ち込んだ。翌年は舞台衣装を忘れて先に吹き終えた氷川きよし(中国)の服を急いで脱がせて借り、そのまた翌年には靴を忘れて先に吹き終えた氷川きよしの靴を急いで脱がせて借りた(次の年には氷川きよしはもういなかったが幸い何も忘れなかった)。


 コロナウィルスの影響も有って4・5月はレッスンを殆ど受けられなかったがどうやら家で真面目に練習していたらしく、5月後半にようやく学校で合わせが出来るようになった頃には順調な仕上がりだった。おまけに学校の行事予定もカオスで先生達の都合が揃わないからいきなり2週間後に試験やれと言われたものの慌てる事なく、合わせの後には自粛期間中に我慢していた生ビールを飲みに…。いつものお喋りぶりに拍車がかかって、「人類は何故何度も同じ過ちを繰り返すんだろうね?」とテーマも壮大に。それぢゃあお前が毎回合わせに遅れてくるのはなんなんだよ!と心の中でツッコミを入れる。


 ガラガラのホールとはいえ30℃の暑さの中楽章毎にシャツの袖で汗を拭きながらの熱演。オンラインで聴いていたお客様にも十分に暑さは伝わったであろう。極めて美しい第2楽章を有する知られざる傑作ヨルク=ボウエンのソナタは是非多くのフルーティストに演奏して欲しい!


 終演が遅かったので大慌てで飲み屋へ。まだまだ大人数での宴会は出来なかったので殆ど出演者だけで、でも大量に飲みましたよ。