土曜日の夕方に修了小演奏会をしてオーナーとコックさんをご招待。既にほろ酔いの先生お2人にも2重奏をしてもらいました。英語を話さないコックさん(どうせ私も殆ど出来ないけど)はイタリア語で全身を使って褒めて下さいました。
かくしてイタリアはトスカーナでの天国的1週間が終わりハンブルク空港から電車に飛び乗ってドアマン夫人(ドアウーマン)との演奏会場へ直行です。
何故こうなったのか?
フルートのドアマン先生は同じオーケストラでチェロを弾いていたドアウーマンと結婚。ウーマンはオーケストラを退職して演奏活動からも遠ざかった。友人の画家がブラームスのソナタに霊感を得て描いた数点の作品と演奏とのコラボの申し出を受け公開の演奏会では凡そ20年ぶり(!!!)に弾くことを決めたとか。
チェロそのものから離れた訳ではないとは言えやはり久々の演奏会には周到に準備をして臨みたいものの、共演予定のピアニストが2週間前にならないと合わせが出来ないそうで、彼と合わせる前に何度かピアノと合わせたいわ〜と言うウーマンにドアマン先生が私を紹介してくれたらしい。
何度か合わせをして彼女も心が少しずつ軽くなっていったようで、後は予定のピアニストと楽しんで下さいね〜と言って別れた。
或る朝、ウーマンから電話。先ずは遠回しに、
「貴方と何度か一緒に合わせた時はとても良い気分で弾けました。有難うございます。」
…こちらこそ嬉しいです。
「昨日ようやく演奏会で一緒に弾くピアニストと合わせが出来たのですが…」
…おお!どうでしたか?と訊く程ではない間が空いた後、
「彼、全然弾けやしないんです。」
…………。
続きは聞くまでもなかった。15日は空港から直行になりますから、飛行機が大幅に遅れたら間に合いませんよ?と言っても遅れないように祈ってるヮとのことで弾くことにした。幸い飛行機は定刻に着陸(ドイツ鉄道とはエラい違いだ)して、会場近くの駅にはドアマン先生が迎えに来てくれた。
会場はウーマンのお母様が入居している老人ホーム(ドイツ語だと引退した人達の里という雰囲気になる)。演奏の前にウーマンと画家の書簡が1時間近く朗読されたのでお客様の目の前で居眠りしかかりましたが無事に弾けて、打ち上げはドアマン邸でご馳走になりました。
4日後には歴史地区で何百人ものお客様の前で演奏。会場練習に行ったらまだピアノが運ばれていなかったりしましたがウーマンは臆することなく先日よりも更に情熱的に演奏。お母様も、「今日の方が良かったわよ!」と仰った。
2月にもありましたが久々に舞台に上がる演奏者との共演は責任重大(気のせいかも知れないけど)で、しかもそれを見せないようにしないと…今回もウーマンが気持ち良く弾けて良かったですが終わった後はどーっと安心してフレンドリーなバーテンダーのおにーちゃんの所にループのように行ってまたベロンベロンになりました。