笑う伴奏生活

ハンブルクから愉快な共演者達を御紹介します。

やがて崩れ落ちる音大

 我が校コレペティの大黒柱K先生が引退されました。大黒柱が居なくなったということは、後は崩れるばかりですね。

 とにかく長年に亘ってハンブルク音大の演奏会でいつも素晴らしい演奏をされた看板ピアニストで、コレペティグループ代表のおじさん(これがニックネーム。自分だっておじさんのくせにと言わないでいただきたい)が5月24日にさよなら小演奏会を企画しました。
 でもどうしよう。コレペティの人は普段学校ではソロなんか弾かないし、私が担当する学生はK先生と面識もないし…。と思っていたらK先生が、
「是非何かソロを弾いて下さいね!」
とお達しを…そう仰るなら弾かなくては。誰の曲が良いですか(曲目はご希望に添えない場合がございます)?と訊くと、
ショパングリーググリーグがいいな!」
というお話。グリーグなら私も好きだし!と全10集有る抒情小曲集からかなり地味目の第7集の中の3曲を弾くことにした。
 それにしても他の同僚はどうするのかちょっと気になる。伴奏が本職の人達の中で独りで弾いたら目立ちたがりとか友達いないとか思われ…別に思われても良いけど…。同じくK先生と関わりの少ない楽器を担当するYさんはどうするのかと思っていたら、
「どうしよう…野笛さん何か一緒に弾かない?」


…その手が有ったかあっ!弾く!と即答。以前から弾きたかったシャブリエの3つのロマンティックなワルツを弾くことに。わくわく。


 同僚の丸い女Mから当日のプログラムが届いた。K先生に散々お世話になったというのに教授陣はヴァイオリンのH先生(仮名)只1人が参加。K先生とシューベルトを共演する。バルトークヒンデミットのイメージが強いH先生のシューベルトは意外。それにK先生との2重奏も聴いたことがない…。

 教授陣と共演って手も有ったか。私もサンタ先生や落武者先生にお願いすれば良かったッ!
 よく見たら数年前から同僚の不幸な男(仮のあだ名・モルドヴァ)もソロを弾くことになっている。立場が軽くなった(私のソロがヘタクソでも彼がお口直しをしてくれるであろう)、ほっ。


 非公開の内輪演奏会だと思っていたらK先生の人望の為予想を遥かに上回るお客様が!しっしかも10年以上前に引退された大大先輩のP先生まで!!


 …この状況でソロ弾けってか。


 お陰で最初っから最後まで全10指震えっ放し。子供の頃のコンクールを思い出しました。
 K先生とH先生の2重奏は深い信頼関係が感じられる素晴らしい演奏でした。Yさんとのシャブリエは全てが上手く行った訳ではない(それまで余裕で弾いていたら突然難しくなる箇所がいっぱい有る)ですが凄く楽しみましたッ!最後は不幸な男の提案でコレペティ4人衆の2台8手によるハチャトゥリアンの剣の舞で締めました。
 続く小パーティーではYさんの手作りスナックが瞬く間に売切れ、開いている酒の瓶は何故か全て私の所にやって来ました。


 翌日K先生にお疲れ様メールで、
「H先生がK先生を信頼しているのが伝わって来ました。」
と書いたつもりが、
「H先生がK先生を心配しているのが伝わって来ました。」
と書いてK先生を驚かせました…。