笑う伴奏生活

ハンブルクから愉快な共演者達を御紹介します。

抒情小曲集完結…。

 先月末グリーグの抒情小曲集第10集を1人勝手に録画しました。これで全10集全66曲弾き終えました…。


 6年前に日本の師匠が、
「全曲演奏をやってみたらどうですか。」
とアイディアを下さった。その時は66曲がとてつもない数に思えて無理無理!と思った。
 そのうちそう無理でもない気がして来た。暫くソロの演奏会を自主企画していなかったし、腐ってしまわない為にもやってみようかと思い始めた。
 全10集を2集ずつ5回に分けて、プログラムの後半には毎回違う作曲家の曲を弾こう、半年毎の1時帰国に合わせて2年半かけて、集客は難しいから親しい人だけを呼んで…。
 と5年前の春に原宿の小さなサロンで第1・4集を弾いた。後半にはラヴェル。サロンのサイトには定期的に調律していると有ったので先ずはそれを信用することにした。
 当日行ってみるとピアノの音程は少々狂っていた。『あちゃ〜』と思ったが今回はこれでやるしかない。次回からは調律をお願いしよう…。
 会場はとても小さく20人のお客さん(私にはこれがせいぜい)で丁度良く見えた。ピアノはベヒシュタイン特有の少々硬めの響きだが伸びやかな良い音色だった。


 全曲演奏を勧めて下さった師匠は体調が優れず聴いていただけなかったが努力の甲斐有って気持ち良く弾いた。少なくとも本人はそう感じた。
 アンコールに短い曲を2曲弾いて退場したらいつもご招待(勿論入場料は頂いていない)していた或る先生が早足で目を背けながら出口を通り抜けて行った。最近SNSに1流シェフとのツーショットを毎週のように投稿されていて今回ご招待するのを辞めようかと迷った人である。元々少ないお客様なのでサロンのオーナーは終演後会場で小さな打ち上げをさせて下さった。何人かの友人からは、「もう少し大きい所で弾いて〜!」と言われたがお客さん呼べないし広さに合った演奏を心がけたし…と答えた。事実、そう思った。


 そのサロンはFBにもアカウントを持っていたのでお礼も兼ねて、
「楽器も雰囲気も良くてまた是非弾かせていただきたいです。」
とサロンコンサート終了の報告を投稿した。
 そして来て下さった皆さんに個人的にお礼のメールを、逃げるように退散した例の先生にも送った。


 彼女の返事は予想通りだった。あんな会場で調律もしないでFBに大変満足みたいに投稿していてショックを受けた。K先生(我が師)が来られなくて良かった。私はお世辞を言えない性分だけどみんな同じ感想ではないかと懸念している。プライドを高く持ちなさい、と。


 どんな趣旨でどんな気持ちで弾いても必ず気分の悪い事が起こるので日本で弾くのがイヤになった。
 勿論全てのピアニストが1流シェフよろしく彼女とのツーショットをFBに載せて欲しいならば彼女の意見は全く正しい。でも私は即座にこう返信したかった。
「貴方の弟子のYのようにおばさまのパトロンを大勢引き連れて使用料が何10万もかかる素晴らしいホールでコマーシャルで使われている曲のメドレーを耳をつんざくような音で弾くべきでしたか?」
と。
 Yを非難する気もなければ彼女に理解を求める気もなかった。ただ、グリーグシリーズは第1回を以て終了。その旨を来て下さったほんの数人には理由と共にお知らせした。
 それに対する意見はここに書く必要はないと思うが、「あんな会場」とは他の誰からも聞かれなかった。最も彼女の言う通り皆心の中では思っているのかも知れないが。兎に角私は腐る道を選んだ。


 でもグリーグ は相変わらず好きで暫く経ってまた弾き始めた。第2回に予定していた第5集の第1曲、『羊飼いの少年』が難しくてブランクが3年空いてしまったがその後は楽しくて楽しくて次から次へと弾きまくった。


 こちらが再生リストです。


https://youtube.com/playlist?list=PLBEepg2erUkELCu7MlmuRw-KdzcE9-HWi

 

 学校のホールのピアノはいつも整然と調律されている訳ではないのでお聞き苦しい点も有るかと思いますが、もしそれが甚だしく感じられた場合には直ぐに再生を停止して下さい。
 そしてM先生はお聴きにならないことをお勧めします。