笑う伴奏生活

ハンブルクから愉快な共演者達を御紹介します。

回想の北フランス(1)

 年末年始旅行の目的地の中から北フランスについて少し詳しく。南フランスは南仏だから北フランス北仏になるんだろうか…やはり南に比べると馴染みが薄いらしい。
 世界遺産にも登録されているベルギー・フランスの鐘楼群を見た〜いと思い始めたのは数年前、機内にてフランスのコメディ映画「シュティの地へようこそ」を見てから。両国合わせて56もの鐘楼が登録されているそうで今回見られたのは僅かに5つ。完全制覇とは言わないまでももっともっと見たいし、その鐘の音も聴きたいです。
 先輩を訪ねて3日間滞在したベルギーのゲントから今年も元日に国境を越えて北フランス・ノール県の県庁所在地リールへ。フランス人に言わせるとリールや「シュティの地へようこそ」の舞台となった小さな町ベルグを含め北一帯は天気は悪いし寒いし暗いしあまり行きたくな〜い所らしい。
 …要するにドイツにおけるハンブルクみたいな所か。いいもん。ぜーんぶハンブルクで慣れてるから。方言が物凄く分かりづらいのも大きな特徴らしいけどどうせフランス語全然分からないし!
 というわけでリールに到着。噂通り雲に覆われた灰色の空からはポツポツと雨が降っているけれどそれはゲントだってそうだったし、フランスの人は南と比較するから北の気候がより悪く感じられるのではないだろうか。ってことはベルギーにはゲントよりも断然天気の良い地域が無いからゲントの天気の悪さが目立たないのだろうか…。
 今回ベルギーで訪れたアントワープ・ゲント・ブルージュが何れも観光客でごった返していて幾つかの名所は入場を諦めたのに対しリールではそのようなことはなく、落ち着いた雰囲気の街の素顔が楽しめそうな気がした。観光客が少ない分街中で飛び交うのはほぼフランス語のみで、滞在中ホテルと美術館と駅のおにーさん以外からは英語を殆ど聞かないことになる。
 リール美術館はフランスではルーブル美術館に次ぐ規模を持つそうで、お陰で常設展の入口が何処かなかなか分からなかった…。ゴヤの「娘達」と「老婆達」が有るというので楽しみに行ってみたら子供の頃から知っている名作の数々!ルーベンス、モネ、ロダンブールデル、ゴッホ、ルドン、シスレークールベドラクロワ…鑑賞に3時間半もかかってしまったのでベルグ行きは翌日に変更しました。因みにゴヤの「娘達」は修復中で観られなかったので「老婆達」で我慢しました(失礼な!)。
 リールはまた俳優フィリップ・ノワレの出身地でもあります。50年以上に亘る俳優生活の内に100本を超える映画に出演し2006年にパリで亡くなりました。映画史上に残る名作「ニュー・シネマ・パラダイス」の映写技師アルフレード役と言えばお分かりでしょう。私は未だ僅かに3本しか彼の出演作を観ていませんが何れも誠実な人柄が滲み出ているような演技が心に残っています。リールの町外れを歩いていたら彼の名を冠した「フィリップ・ノワレ劇場」を見つけました。その前に暫く立ち止まっているとアルフレードを演じた彼のお茶目で温かい眼差し(火事の場面でアルフレードは失明するので眼差しは前半だけですが)が思い出されました。これを機に「追想」や「地下鉄のザジ」など、彼の出演作をジャンジャン観ようと思います。
 ベルグについては次回にします。