笑う伴奏生活

ハンブルクから愉快な共演者達を御紹介します。

S、底力を2度発揮。

 2月10日、フルートのS(イタリア)の卒業演奏会。夏に、「イタリアから留学して来て卒業演奏会が無観客なんてことになったら悲しいわ…。」と言っていた彼女だが2月になっても自体が好転しないなんて誰が予想しただろうか。無観客のみならずライヴ配信すらされなかった(どの演奏会を配信するかの決定基準は不明)。
 ジャイアン先生はいつも生徒にあれやれこれやれと言っていつもプログラムが豪勢になり、生徒は練習が追いつかなくて演奏時間は長過ぎる。今回私が一緒に弾いたのはバッハのハ長調ソナタは良いとして、ジャイアン先生がオーケストラ伴奏で吹いたと度々自慢するホフマンの演奏会用小品と、ジャイアン先生が自ら編曲したレスピーギのヴァイオリン・ソナタに加え、タンゴ『嫉妬』を下敷きにした華麗なる幻想曲(超絶技巧)。他にルーセルの三重奏曲とマデルナの電子音楽が加わり、ジャイアン先生は更にジョリヴェの難曲リノスの歌も吹けと言ったがSと私が結託して却下に成功した。
 会場には試験官の先生2人と室内楽の共演者(コンピュータ操作をするフルートの学生Gを含む)と、後のお客さんは2人だけしか入場を許可されず。小柄な彼女だがパワーを発揮して素晴らしい演奏を披露した。
 ずっとずーっとマスクを着けて弾いて、演奏を終えてホッとして最後写真くらいはマスクを外して撮ろうと思って外したマスクを手に持って写ったら、SNSに彼女が投稿(それも不注意が過ぎるが)を目ざとに見つけた学校の衛星班からソレッとばかりに苦情が来た。「親愛なるイト様、マスクを私達に見せる挑戦的な態度は衛星班の理念に沿いません。」
 ずっとずーっとマスクして頑張ったのにたった10秒外した写真を…しかもあんた達に見せたんじゃなくて手に持っただけだし撮ったのはあんたじゃなくてカメラマンだし…と悲しい気分になったもののマスクを外したのは自分が悪いんだから不注意を詫びるメールを返信した。
 ジャイアン先生もマスク無しの記念撮影をしていたので、「厳しい状況下での演奏が終わった解放感を分かってやって。」と言い訳メールを送った模様。
 しっしかしSは、「私は友人にしか公開していないのにどうやって写真に辿り着いたの!?プライバシーの侵害だわ!」と抗議。ホンワカした子だと思っていたら強さを発揮…なるほどハードなプログラムも見事にこなせるわけだと納得したのでありました。