笑う伴奏生活

ハンブルクから愉快な共演者達を御紹介します。

人生最悪の5分間は辛くも回避された

 9月20日にドイツに戻って来て10月12日にやっと今学期最初の演奏会。私は本当にこの学校に属しているのか?

 フルートのJはジャイアン弟子。ドアマン先生の下で勉強を始めたが先生が少々優し過ぎたらしく2年後にジャイアン先生クラスに移籍した。一昨年の学部の卒業演奏会では開演時間を過ぎてまでジャイアンがあそこが違うここが違うと既に入場していたお客さんの前でこまごまくどくどとレッスンし、後にJ本人をして、「人生最悪の5分間だったわッ!」と言わせることとなった…。
 ゲネプロは幸い前日になったので2年前の人生最悪記録の更新は免れそう。しかし案の定ジャイアン前日になってあれをこうしろそれをどうしろとこまくどレッスン。リズムが違うとかって初回のレッスンで指摘すべきことだと思うんだけど…。
 テレマンのトリオ・ソナタで始まる他はフランク、タファネル、ウェーバーとスクーマルという体力の要る曲ばかり。最後までスタミナがもつだろうか。
 ウェーバーのトリオではチェロは台の上で、フルートは立って吹けとジャイアン先生が提案(ほぼ命令)。通常この編成は全員座って演奏するのだが…。Jは、
「本気ですか?冗談だと思ったッ!」
と抵抗したが、
「当たり前だ!弦楽伴奏で座って歌う歌手を見たことが有るか?」
というお話。私はウェーバーのトリオを立って吹くフルーティストも見たことないですがね。チェロの台も重くて設置にも撤去にも余計に時間がかかるんですがね。兎に角Jは疲れるプログラムをずっとずーっと立ったまま吹くことになった。
 今回はJも人生最悪の5分間の教訓を活かし直前まで控室で待機。良く集中して実力を発揮した。私も久々のフランクのソナタは中々気持ち良く弾けた。終演後はもう既に閉校時間が迫っており明日の朝はオーケストラのオーディションが有るのにJはドレス姿のままジャイアンのあそこが悪かったここが悪かったを何十分も聞く羽目に。ドアマン先生のクラスに留まっていた方が良かったのではなかろうか。


 これで今学期の卒業演奏会は暫く有りませ〜ん!