笑う伴奏生活

ハンブルクから愉快な共演者達を御紹介します。

GはギリギリのG

 6月30日。ジャイ弟子G(勿論フルート・スロヴェニア)卒業演奏会。 共演するのはバッハのロ短調ソナタシューベルトの萎める花・プロコフィエフソナタという王道中の王道。
 前日になって、「ライヴ配信されないんだって〜
知らなかった〜貴方のビデオカメラを持って来てくれな〜い?」
とのお話。


 開演30分を切ってから友達とスーパーへ行ったG。集中出来るんだろうかと心配していたら案の定数え間違ったり落ちたり大ミスの連発。こんな有名曲ばかりなら観客にだってミスがわかるに違いない。特にバッハでは何がどうなったのか第3小節から始めたので直ぐに2小節飛ばして合わせたらまた2小節戻して吹き続けようとしたから舞台の上で静かにキレました。
「G、そうはいかない。もう1度初めから。」
 これほどの大失態を演じたのだから舞台袖で泣き出すかと思ったら待機していた友達と楽しくお喋り。彼女の気持ちが分からない。
 どの曲も中々酷かったので終演後は気まずくて彼女が駆けつけた友人達と談笑している内にそそくさと退散。折角やっと演奏会にお客さんが来られるようになったのに…。


 数日後、「素晴らしい演奏会で伴奏してくれて有難う!スロヴェニアに帰る前に会えないかしら?」
とメッセージが来た。素晴らしい演奏会って…直ぐに返事をせず2日後に毎日学校にいるよーと返信したら、
「もうスロヴェニアに向かってるの。9月に会いましょ。」
という話。
 …分かった。彼女はギリギリにならないと行動を起こせないんだ。

 後の祭りでございました。