笑う伴奏生活

ハンブルクから愉快な共演者達を御紹介します。

鍵事件

 4月24日、具合先生(声楽)クラス録画大会。
 4月25日、オーボエのサラ(ドイツ)卒業演奏会。
 実は大事件が…。24日録画大会に向けて大荷物を2回に分けて運び出す前にスーツだけ持って1度部屋を出てさあ運ぶぞと戻ったら電子化された鍵が壊れて開かない。守衛のイワオさんもマリオさんも鍵と格闘してくれたしホール担当の技術者のお2人も手伝ってくれたが特殊技術が必要で直せない。週末の為専門の技師には連絡がつかない。部屋の中には財布・鍵・身分証明書等、要するにスーツ以外の全てが閉じ込められた。
 大家さんに連絡がとれて家には合鍵で入れることになった。それよりも問題は楽譜。具合先生クラスの歌手達はそれぞれ楽譜を持っているし、具合先生にi Padを借りれば何とかなる。でもオーボエのサラは既にホールで私を待っていたがお陰でゲネプロが出来なくなった。演奏する曲は3曲ともインターネットでは入手困難な曲。彼女がパニックにならなければ良いが…。
 何故か持っていたスーツのお陰で具合先生クラス録画大会は無事開催。直前の鍵騒ぎでウンザリしていたためあるぞう君(カウンターテノール・台湾)のモーツァルトでメロメロになる。あの録画は消去して頂きたい。
 オーボエのサラは実に落ち着いて知り合いのオーボエ奏者に電話をかけまくり3曲共楽譜を手に入れた。彼女が家で両面印刷したものを翌日学校で製本して演奏直前には短いホールリハーサルも出来た。演奏は堂々としたもので、演奏会に向けて努力した人はその成果が必ず発揮されるものだと再確認。何ヶ月か前から定期的に合わせをしておいて良かった〜!ジャイアン弟子(例外は有るが)とはエラい違いだ…。
 演奏された3曲の内特に気に入ったのはハンス・ガルのソナタ。1987年に亡くなった作曲家だが古典的な形式を重んじたリコーダー作品で知っていた。オーボエソナタは派手さは無いが手の込んだ手法で、第2楽章の「パヴァーヌ」のセンスの良さが特筆もの!もっともっと演奏されるべき曲です!
 チェコの作曲家スラヴィツキの組曲は学生時代に同級生の卒業演奏会で共演した(25年前)思い出があるが、あの時時間の都合で割愛した第3楽章「悲歌」の素晴らしいこと!今回演奏出来て良かったッ!
 演奏会当日は全ての飲食店が持ち帰りを除いて営業を禁止されていたのに加えて、午後9時以降の外出は基本的に禁じられており、演奏後は教授2人と中庭でお忍びでワインを飲んだ。落武者先生は、「僕はスラヴィツキを吹く!」と宣言し、誉め殺し先生は、「あたしはパスクリを吹くわ!」と約束。さあて、果たされるでしょうか。