笑う伴奏生活

ハンブルクから愉快な共演者達を御紹介します。

小学生卒業

 2月21日、小学生(フルート・韓国)卒業演奏会。

 度々申し上げますがとても30歳には見えません。今日は最終課程のソリストコースの試験ですが、聴きに来た湖のお坊ちゃんと彼の友人C(共にドイツ)は小学生の実年齢を聞いてマスクから出ている数少ない部分であるところのまなこを同時にかッ開き(2人ですから都合4つですね)それだけでも最大限に驚きを表現しました。
 選曲は渋く所謂スタンダードは1曲も入っていないものの、どれをとってもフルーティストなら大抵知っている辺りの曲が並びました。チェンバロとのバロックソナタはグラウン、弦との3重奏はレーガーです。
 私にとっても今までに数えるほどしか弾いたことのない曲が4曲。フルーティストだった為かピアノ・パートがどれもこれもやたらと弾き辛いゴーベールの3曲のソナタ中最も地味で最も弾き辛い第1番に、多作家で似たような雰囲気の曲が多いから1回弾いたら直ぐ忘れるボザのアグレスティード、ベルギーの作曲家ジョンゲンの今では楽譜が入手し辛くなってしまった大作のソナタに、最後は有名なタンゴ『嫉妬』をデンマーククリスティアンセンという作曲家が編曲した幻想曲(フルートはメチャクチャ難しいらしい)というプログラム。
 本人当日はあまりいっぱいゲネプロで吹かない主義でドアマン先生は暇を持て余して開演時間まで街に繰り出した。私はこれ幸いと暫く舞台上で練習していたらチェンバロ緑の党先生が楽器を調律しにやって来て何故かバッハとレーガー談義になった。


 小学生の心配なのはスタミナだけ。前半を素晴らしく吹き終えて彼が言うには、
「ノブエさん、僕はお腹が痛いです。」
ということだった…。私も経験有る!懐かし〜!
 …な〜んて言っても何の慰めにも助けにもならなかったであろう。


 後半のジョンゲンの大曲も超絶技巧のタンゴもめでたく終わってどうやら気分も良くなったらしく、ほ〜っと安心した表情で、
「さあ、ビールを飲みましょう!」
と言った。でも彼はドイツでビールを注文すると年齢を確認されそう。


 そして私は会場に学校から借りている録音機を忘れ、次の日慌てて取りに行ったのでありました…。