ヴィエルゾンでの朝食にはビニール袋に個別包装されたワッフルやマドレーヌがズラッと並んだ(手抜き?)。丁寧に英語で説明してくれるおねーさんに感謝しつつセルフサービスだし!とそれらを次々にポケットに入れた。これが後で功を奏することになる。
先ずは電車に40分だけ乗ってシャトールーへ。そこからバスで今日泊まるモンジヴレーを目指す。バスターミナルのおねーさんの英語もあまりペラペラではなくこの方が聞き間違いが少なくて済む。発車まで1時間有ったので街をちょっと散歩。
大聖堂
バスの運転手さんは英語が上手だった。モンジヴレーに着いたら教えてくれるって!
モンジヴレーに行くには夕方の演奏会場のノアン・ヴィクを通る。
通った。
…ちょっと待て。ホントにここ!?
サンドの似顔絵の看板が出ていたから分かったが他の建物が殆ど見当たらない。レストランなんて全く無い。こりゃホテルも無くて当然有る方がおかしい。
そしてそこからモンジヴレーまでは後で歩いて帰るかも知れないから注意して観察する。が…
歩道が無い。
街路灯が無い。
終演は22:30…。
バス無し。
タクシーが無かったら真ッ暗闇の中ここを歩くの?
悩む間もなくバスはモンジヴレーに到着。なんと宿のご主人がバス停まで迎えに来てくれた!フレンドリーなにーちゃんだがフランス風アクセントの英語で商談もこなすらしい。自宅の一室を旅行者に提供しているようで朝食も用意してくれる。
モンジヴレーも本当に小さな街で、唯一のレストランは思った通り休暇中。町外れに大きなレストランが有るらしいが暑くてそこまで行く元気ナシ(今朝ヴィエルゾンのホテルで朝食のワッフルやらマドレーヌやらポケットに突っ込んで来て良かったッ!)。でも可愛いお城が有りました。
さて、演奏会に向かいましょう。携帯ナビが別な道を提案したのでそちらに挑戦。しっしかし…
目の前を子鹿が駆け抜けて行ったりして凄いスリル。ここを夜帰るのも無理だ…。
ノアン・ヴィクの最初の家を見つけた時はどどーっと安心した。
ショパン通り
ショパンの胸像
サンドの館
会場内に小さなレストランが有ったのでソレッとばかりに食事。ワインも美味しかったです。
英語の上手なウェイトレスのおねーさんと、御出身は?どちらのワインがお好き?などとささやかな会話も楽しい。
演奏会開始。ハノーファーで聴けなかったフランクは端正で厳か。もっと感情的に弾くのではと思ったが抑制された表現もすんなり心に入って来る。
ハノーファーでは教会の残響で細部が聴き取りづらかったラヴェルはフランクとは対照的にエネルギーが外に向けられているのを感じた。こちらの曲の方が内向的に演奏されることが多いので、この前半の2曲の対照は興味深かった。
休憩中に庭を散歩。のだめカンタービレの孫Ruiの、「ショパンもここを歩いたかな?歩いたヨ!きっと。」を思い出した。
後半はショパンの24の前奏曲。暑いのに1曲1曲を楽しんでいるようでくるくる変わるキャラクターにワクワクする。第2番が既にドラマティックだったし第8番は大きな流れ。キラキラ可愛く輝く第23番が今でも心に残っている。この人の前奏曲を聴くのは3度目だが毎回印象に残る曲が違うのも面白い。
気分が良かったのかアンコールを4曲も弾いてくれた。特に3曲目に、「ラヴェルの『亡き王女の為のパヴァーヌ』を弾きます。」とアナウンスすると会場中から、「アァ…。」と喜びの溜息。やはりフランスでも人気の曲らしい。4曲目はショパンの夜想曲の中でも最も弾かれる機会の多い変ニ長調。スッキリと美しく、熱い夜にピッタリだった。
国境の街ケールで買ったドイツビールをジョッキ型の栓抜きと共に進呈。面白がってくれて飲む真似をしている横で私が扇子で仰いでいるところを主催者の方が撮ってくれたのだが勿論こちらの手には入らず。見たい〜!
…さてここからが問題です。期待はしていなかったがやはりタクシーなんか通りゃしない。もう1度畦道を40分歩くなんて絶対イヤだ。
そしてバス通りは勿論真ッッッ暗。でもそれしか方法がない。
ぢゃ〜行くか…。携帯電話のライトで標識を照らしていたら先程のレストランのおねーさんが車の中から、
「Everything ok ?」
と声をかけてくれた。モンジヴレーへの方角を尋ねると地図で調べ、歩いて行くの?と訊かれそうだと答えると、
「乗りなさい!」
と車のドアを開けてくれた。地獄に仏!大感謝!
車だとモンジヴレーまでは僅か5分で着く。別れの際に彼女は、
「私が知っている日本語は1つだけ。それはカンパイ!」
と言うので最も大切な単語です!とお礼を言った。またいつかノアン・ヴィクでの演奏会に行ったらレストランでお会い出来るかも知れない。
宿に着くとオーナーのおにーちゃんが英語で仕事関係の電話をしていた。お休みなさ〜い。