笑う伴奏生活

ハンブルクから愉快な共演者達を御紹介します。

モーツァルトの女生徒になった話

 4月28日、ミュンヘンにて室内楽の演奏会。ハンブルクで愛された歌姫Nねーちゃん(日本)のご主人ブーさん(ヴィオラ・ドイツ)のお誘いで弾いて来た。

 クラリネットヴィオラ・ピアノという編成でクラリネットはブーさんと同じミュンヘン・フィルのおっちゃんAさん。バスクラリネット奏者で演奏のない日にはキーム湖のほとりで悠々自適の生活を送っているとか。この編成だと曲目は限られるし昔々何度か演奏会をしたことがあるからきっと弾いたことの有る曲だろう。
 予想通りモーツァルトのケーゲルシュタット・トリオ、シューマンのおとぎ話にブルッフの8つの小品。思い起こせばモーツァルトは帯広でIさんとYさんと一緒に弾いて、温泉ホテル宿泊をYさんの師匠だった今は亡き駄洒落王先生にもの凄く羨ましがられた。シューマンは野生児(ドイツ)と踊るピンクベアさん(日本)と弾いた時には野生児がカオスすぎて良い想い出がない。ブルッフは目の毒(韓国)の卒業演奏会でくノ一(ルーマニア)と一緒に弾いた…。


 演奏会は3つの会場で同時に開催され聴衆は各会場を渡り歩くのだとか。1回のプログラムは30分なので当然各曲1或いは2楽章の抜粋になる。ミュンヘンで演奏会なんて滅多に無いし数少ない知り合いにお知らせして応援に来てもらお〜っと!
 …と思ったらとっくに売り切れだった。共演者が名手だし会場小さいし…もっと早く行動すべきだった…。


 私達が演奏するのは或るピアノハウス。ボーデン湖畔のザウターというメーカーのピアノとベーゼンドルファーのグランドピアノが舞台に並んでいた。弾いてみたらザウターのピアノは軽やかで明快でモーツァルトにぴったり。ベーゼンドルファーの音色は素敵ッ!素敵でしたッ(新ヴァージョン)!欲しいッ!買いたいッ!無理だけど…。
 演奏会はブーさんとMさんが短い解説をしながら進行。モーツァルトの『ケーゲルシュタット・トリオ』はクラリネット奏者の友人シュタドラーとモーツァルトのピアノの女生徒(2台のピアノの為のソナタを一緒に弾いた女生徒とは違って美少女だったらしい。どうでも良い話ですが)と演奏するために書かれ、ヴィオラモーツァルト自身が弾いたとか。要するに私はブーさんの女生徒役だったのです。30分×3回、楽しくて瞬く間に終わってしまいました。
 終演後ピアノハウスのスタッフの方がゼクトを振る舞って下さったのですが、
「私達このベーゼンドルファーを愛しているのです!これが売れたら悲しいわ…。」
と仰っていましたが、
「私が買っても悲しいですか?」
ととてもとても言いたかったですが現実性に欠けるので我慢しました。