笑う伴奏生活

ハンブルクから愉快な共演者達を御紹介します。

ヴィオレッタの変身

 6月28日、フルートのヴィオレッタ(ハンガリー)の卒業演奏会。
 初めて共演したのは彼女が2年生の時だから3年近く前になるが、試験や演奏会が近づいても合わせというものを殆どしない人でこちらが心配になるほどだった。実際2年目の中間試験では暗譜がメロメロになり先生達の前で泣いた。頻繁に実家に帰り、入学後1年以内に受験すべきドイツ語の試験も何度も延期して退学寸前にまでなった。やる気が無いんだと思っていた。
 3年目に入って暫くしてドイツ語の試験に合格した頃から合わせて〜と頻繁に頼むようになり、練習後も愉快な会話をすることが増えた。そんなに頻繁に合わせする必要無いんじゃない?と言いたくなるほどであったが、あの熱心とは言い難かった彼女が折角やる気を出したんだし…とちゃーんといっぱい合わせをした。
 卒業試験前の1週間は演奏曲目を毎日通した。ただ通すだけだったがこれがいざ演奏会当日に生きた。以前は途中で息が上がってしまうことが多かったが当日はマイペースを保った。ムチンスキーのソナタでは少し緊張していたようだがバッハの途中から落ち着いてきて音色がどんどん綺麗になっていった。最後のタファネルでは今迄で1番の演奏をした。
 カーテンコールに私の手を強引に引っ張って連れて行った彼女は終演後故郷の名産品のトカイワインをくれた。