笑う伴奏生活

ハンブルクから愉快な共演者達を御紹介します。

何故かエリーゼのためにを弾く。

 日本で笑えない独奏生活をして来ました…。6月に函館在住の先輩からジュニアコンサートゲスト出演の打診が有り、「エリーゼのためにとか子犬のワルツとか誰もが1度は弾いたことのある曲をプロが弾くとこんなに素敵なんだ!と子供達に聴かせたいの。」という主旨らしい。それなら先輩がご自分で演奏なさった方が…と思ったもののプロで素敵かどうかはさておき何故か引き受けた。
 エリーゼのためには何と自分でも何と10歳の時(遅い!)に発表会で弾き、大学院の修士論文提出直前にも『しあわせ家族計画』で『名人』として弾いた想い出がある(その直前に客員教授だったS先生にレッスンを受けたと話したらK先生に、「持ってく方も持ってく方だけどみる方もみる方だ!」と呆れ返られた)のでエリーゼのためにを含むベートーヴェンの技術的に比較的易しい小品数曲を弾くことにした。
 とっところが!当の先輩が、「チラシを見てびっくりしたんだけどあたしもリサイタルでエリーゼのためにを弾くの!」と…。そうと分かっていたら別な曲にしたのに…。演奏会前日になって、「ショパン嬰ハ短調前奏曲と作品64の3つのワルツ(子犬のワルツを含む)って手も有ったか…。」と思ったが時既に遅し。いいもん。4曲とも良い曲だから。それにしてもエリーゼのためにって子供が弾く曲ぢゃあありませんね。悲し過ぎて。
 しかしエリーゼのためになんか子供達の前で弾いて隣の音をちょっとでも引っ掛けたら、「あッ間違えたッ!」という声がホールの方々から上がるのではなかろうか…大学の同級生の名台詞、「ねぇ!どうしてみんな間違えないで弾けるの〜!?あたしどんな短い曲でもどんな簡単な曲でも必ず間違えるのに〜!」が思い出された。
 そして本番ではエリーゼのためには1音も間違えませんでした(幼稚な目標)。プロで素敵と思った子供がいたかどうかは知りません。
 後で分かったのは先輩がリサイタルでは、「子供たちへの贈りもの」と題してエリーゼのためにも子犬のワルツも演奏される予定だったこと。ショパンを弾いていても数週間後には、「I先生(先輩)の方が上手〜!」と言う子供達がいっぱいいたであろうことには変わりがなかったのであります。