笑う伴奏生活

ハンブルクから愉快な共演者達を御紹介します。

閉鎖前日の歌劇場にて。

 凡そ1ヶ月前の事。
 ホセ・クーラを聴きたくて3月12日の州立歌劇場の「オテロ」の切符を買ってあったが、新型コロナウィルス感染拡大の為予定されていた演奏会が次々と中止され始めていた。12日の公演も無くなるのではないかと毎日歌劇場のサイトを確認しながら、それでもやっぱりハラハラしながら会場に向かった。
 30分位早めに会場に着くとガラス越しに既に多くの観客が入場しているのがみえた。どうやら無事開催されるらしい。ほっ。
 偶然直ぐ前に2人の日本人がいて入口の貼り紙を見て騒いでいる。「明日から全部ナシってこと!?」
 …やっぱり。明日から4月末まで劇場閉鎖か。クーラが歌うのは今日と明日の予定だったので、明日のチケットを買った方には悪いが今日にして良かった、と思った。
 予約した時には殆どの席が埋まっていたのに会場には空席が目立った。6割入っているかどうか…。多くの人が直前にキャンセルしたらしいがそれも頷ける(この地点では1000人を超える行事の自粛が促されていた)。
 開演に先立ち劇場のスタッフが舞台上にて事態を説明した。難しい状況の中で開催を決めた出演者・スタッフそして来場した聴衆への感謝、指揮者の体調が悪化した為代役の指揮者が今朝になっての申し出を快諾してくれた事、合唱団員にも体調不良車がいて今日は少し人数が少ない事、濃厚接触を避ける為演出にも多少手を加えられた事が述べられ、「5月にまたお目にかかれますことを心から願っています!」と結ばれた。
 主要な歌手4人が揃って爽快な発声で素晴らしかった。クーラの音楽の人を惹きつける力は相変わらず大きかった。観客総立ちの中カーテンコールが何度も繰り返された。普段あまり歌劇場に足を運ばないくせにこれで暫くオペラは観られないのかとしんみりしてしまったりして…。
 翌日クーラが自身のインスタグラムに、「閉鎖前日のハンブルク歌劇場にて。忘れ難い1夜。」とのコメントと共にカーテンコール時の写真を掲載していた。その視点が私の席と近かったこともあって更にしんみりしてしまったりして…。


 あれから1ヶ月。州立歌劇場の来月からの再開は難しそうだ。