笑う伴奏生活

ハンブルクから愉快な共演者達を御紹介します。

ブリュッセルでリシャール ・アムランを聴く

 イチオシピアニストのリシャール ・アムラン氏の5月26日のリサイタルを聴きにブリュッセルへ。当日6時前に家を出るのがイヤだったので前日にブレーメンの駅前のホテルに泊まって友人と飲みまくり翌朝7時半に悠々と出発する計画。金曜日はケルン→ブリュッセル間が混んでいるらしく指定券を買った。乗り換えにも余裕が有るのでいくらドイツ鉄道と言えど大丈夫だろう。

 大丈夫だったッ!


 何十分も余裕の有る乗り換えが無事出来ただけで感嘆符を付けないといけないドイツ鉄道って…しかしこれが現状なのです。兎に角ブリュッセルに到着。3年前にベルギーをちょっと周った時は乗り換えただけだったので街に降り立ったのは森のくまさんと飲みまくって楽器博物館の音程の狂った音源に悶絶して以来だから10年ぶり?路上の清掃が行き届いていない気がしましたが中央駅を降りて直ぐ王宮広場を目指して坂道を上るとブリュッセルに来た〜と実感します。

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 ホテルは商店街・飲食店街の側で中央駅から徒歩15分位の所です。古めかしい部屋ですが場所と値段を考えれば十分です。会場を確認しつつ街を散策した後レストランを物色しましたが直ぐ近くの交差点に日本料理店がいっぱい有りました。

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結局ビストロに。


 会場はブリュッセル高等音楽院。古くはアルベニスも学んだ名門です。私の先輩や友人にもここで勉強した人が何人もいます。

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美しくて難しいフルート・ソナタで個人的にお馴染みのベリオ。

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こんな良いホールが有ってい〜な〜。


 今日のプログラムは昨年チェコで聴いた時と同じでショパンの2つの夜想曲作品27、ソナタ第2番に24の前奏曲。今年の欧州でのリサイタルはここだけらしい。心して聴かねば(いつも聴いてるけど)。
 1曲目の夜想曲は少ないルバートだからこそ生きる長いフレーズ感。2曲目はあまりに美しくて思わず宙を見上げながら聴いた。
 ソナタの第1楽章もルバートが少なめが故にリズムが生き生き。中間部では色彩を徐々に変えながら常に前進する。第2楽章では立体感が素晴らしく第3楽章では再現部での切迫感が心に残った。
 彼の演奏で24の前奏曲をライヴで聴くのはもう4度目(1度はコロナ禍中カナダからのライヴ配信をパソコンの前に正座して聴いた)。いつ聴いても良いのだが印象に残る曲が毎回違うのが面白い。第2曲はバッハのように明晰だったし第4曲は劇的。第7曲は毎回響きが遠ざかって行くのが美しかったし第9曲は荘重だった。第15曲(雨だれ)はストーリー性が豊かでやはり全曲の中心を成す曲なのだと納得。第20曲は僅か3段の曲だが1段毎にドラマが感じられた。第23曲は音が宙空で遊んでいるようだった。信ぢられない。
 アンコールはブラームスの間奏曲とモーツァルトのロンド。ブラームスでは1つの長いフレーズの中で少しずつ色合いが変わっていくのが驚きだった。モーツァルトでは大胆なリズムと即興性が気に入った。
 終演後にロビーでサイン会が有りいつものようにサインももらわないのに乗り換えのケルンで買ったケルシュビールをいつものように進呈(迷惑な客)。
 素晴らしかったよ〜と言うと、
「16番は色々失敗が有ってとても悪かったけど後は良かったと思う。」
と彼もいつものように正直。今年はもうヨーロッパでの演奏会は無いの〜(涙)と訊くとやっぱり無いって〜(涙)。
「でっでも来年は何回か有るよ!是非来てね!」


 行きます(きっぱり)。


 早くも来年を楽しみにしつつ翌日夕方にハンブルクでソプラノのFの演奏会で共演するので朝早く出発。今回は生ビールを飲む事なくベルギーを去るという有るまじき行為(涙)。それを取り返すべくまたまた乗り換えのケルンで生ケルシュを頂いてから帰りました。夜の演奏会には完全に醒めていました。