笑う伴奏生活

ハンブルクから愉快な共演者達を御紹介します。

ジョンゲンの夕べ

 7月5日、ブレーメンからオランダ方面へ少し行った所にあるオルデンブルクにてフルートのC(台湾)と演奏会。昨秋のフランクに続いて今回は今年生誕150年(没後70年)の同じくベルギーの作曲家ジョンゲンのソナタと小品2曲のプログラム。5月にブリュッセルのジョンゲンが学長を務めた音楽院で演奏会を聴いて来たし準備はばっちり(なぜそうなる…)。

 …ところが強風警報。ブレーメンに20分遅れて着いたと思ったらオルデンブルク行きの電車が出発時刻になってキャンセルの放送。次の電車を30分待ったらまた出発時刻になってキャンセル。15分後の電車を目指してみんな別のホームに移動したらまた出発時刻になって…
 ホーム上でイライラしていたオルデンブルクを目指すみなさん一斉にウンザリした表情で出口へ向かう。或る人は家族に電話し或る人はタクシー乗り場へ。倒木が線路を塞いでオルデンブルクへの電車は全てキャンセルされた。
 余裕で到着のはずが何でこう毎回ハラハラしないといけないのか…。Cにブレーメンまで車で迎えに来てもらうことに。彼女も予定が狂って申し訳ないけどそうしないと演奏会出来ないし…。そんなこんなでオルデンブルクには予定より2時間以上遅れて到着。
 強風の状況はハンブルクよりずっとずーっと激しかったようで昼過ぎには市役所から、『外出は控えて下さいッ!』とお達しがあったとか。Cが言うには、
「5人位しかお客様来なくてもやりましょうね!」
だそうで。夫は来られるから少なくても1人はいるわよ!と言ってます。はい、勿論1人でもやりますとも。
 そのご主人、Cの卒業演奏会(20年前)には当時住んでいたブレーメンから車で駆けつけたものの大雪で渋滞して打ち上げだけ参加。昨年の演奏会でも前日に別の教会のオルガニストがぶっ倒れ急遽代理で礼拝で弾くことになり会場に着いた時には私達がアンコールを終えてお辞儀をしているところだった…。なので彼は私達の2重奏を只の1音も聴いたことがないのだが今日つっついに実現。なんと言ってもこのジョンゲンプログラムはご主人の提案なのです。ジョンゲンは自身がオルガニストでオルガンの為の作品を多数残しているのです。
 しっしかし午後6時に解除されたとはいえ外出禁止令が出たのでは客足が…と思っていたらわらわらとお客様が集まり始め予想よりずっとずーっと多くの聴衆の前で楽しく演奏して来ました。Cは演奏家としてプロフェッショナルで、モチベーションの高め方・リラックス・集中が上手で安心して共演出来ます。私のソロの方がよっぽど集中力散漫でした…。かくして知られざる作曲家ジョンゲンは嵐の後のお客様にステキステキと愛されたのでした。


 打ち上げで連れて行ってもらったレストランのメニューにやけにスリヴォヴィツやらプレシュカヴィツァやら個人的にお馴染みの品が目につく。店員さんに訊いてみたらやはりオーナーがセルビア出身だった。セルビア行きましたよ!と言うと彼は多くのセルビア人がそうであるようにフレンドリーに彼の出身地や美味しいワインが手に入る所を地図まで書いて教えてくれ、終いには1人3杯ずつユリシュカやスリヴォヴィツをサービスしてくれた。
 イェーファーは無かったですが次回から打ち上げはいっつもここで良いです〜!


 そして翌日まだ電車は復旧しておらずまたまたCにブレーメンまで送ってもらったのでありました…。