笑う伴奏生活

ハンブルクから愉快な共演者達を御紹介します。

らしくない独演会

 9月16日、旧函館区公会堂にて独演会。『ざいだん出前コンサート』だそうです。

 小学生の頃古い洋風の建物が好きで何度か連れて行ってもらった。私が函館を離れた後で修復工事が完了して一般公開されるようになり今では人気の観光名所。様々な演奏会が行われるが演奏するのは実は初めて。
 主催者が伊藤さんにメールが届かな〜い届かな〜いと大騒ぎしていると父の元生徒さんが父に報告してやっとメールが来たのでこちらから返信したら何日も返事が来ない。もう1度届いていますか〜と送ったらちゃんと届いていま〜すと返事が来た…。
 何はともあれ出演決定。確かこの演奏会は公会堂の観覧客が会場内を自由に行き来出来てもしかすると最前列を子供が走り回ってお母さんが追っかけ回したり、明治時代の衣装に着替えてバルコニーで写真を撮るおねーちゃん達がやっだーはずかしーとかって騒ぐ声が演奏中に響き渡るかも知れぬ…。あまりシリアスな曲は辞めたが賢明であろうと思って私にはめづらしく超有名作曲家の作品を中心にした。


クープラン
修道女モニク
羊の足をもつサテュロス
・ラモー
ため息
キュクロプス(一眼巨人)
モーツァルト
アダージョ
ロンド
ショパン
夜想曲第3番
夜想曲第7番
タランテラ
ドビュッシー
2つのアラベスク

喜びの島


 間に合うかどうか心配しながら曲目を提出したら出来上がったチラシにはロンドと夜想曲のみが掲載されしかも、『曲目は変更になる場合があります』と有ったので安心した。でも先週の演奏会とは違ってこちらの方は結局一切変更しなかった。
 当日は予報を覆して晴天(と思いきや実は直前に予報自体が変わっていた)。お陰でお客様はいっぱいになったものの暑くて暑くてスーツの袖がしっとりと腕に貼り付き音域が拡がったら服が破れるのではないかと要らぬ心配をすることとなった。それに加えてめづらしく弾いたショパンで入場券を持っていない入場希望の知人の氏名を主催者に伝え忘れたことに気付き集中力が著しく減退。伊藤野笛ショパンヘタクソ説を裏付けたのであった…。
 幸いなことに子供は最前列を走り回らず(走り回る子がいなければ当然追っかけ回す親もおらず)コスプレ女子のやっだーはずかしーも響き渡らなかった。驚きのお客様は小学校でお世話になった先生。40年近くご無沙汰していたのに会ったら何故か分かった。もう1人は函館出身でハンブルク在住のピアニストMさん。正に何故ここに!?だった。同窓会もあって丁度来日中だったとか。いーなー私も同窓会やりたーい!


 偶然のヒットはアンコールにクープランの『シテール島の鐘』を弾いた事。直前までショパンゴダールグリーグも候補だったがプログラムの最後に弾いたドビュッシーの『喜びの島』がワトーの絵画『シテール島への船出』にインスピレーションを得た作品だった事を思い出して、クープランはこの日最初に弾いた作曲家だしこれしかないでしょ!と思ってこれに決めた。
 終演後はスタッフ数人からアンコール曲は何だったんですかと訊かれた。これがいつも密かな楽しみ。ふっふっふっ。