笑う伴奏生活

ハンブルクから愉快な共演者達を御紹介します。

病明けの贅沢

 1週間以上ベッドに篭っていたのは前の前の大家さんのお墓参りに行った時に別な霊を連れて来たのでは?なんて思ったりもしたがやっと回復。そしたら1月23日にはアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団が、24日にはバンベルク交響楽団ハンブルクで演奏会をする!

 コンセルトヘボウでは同級生が、バンベルクでは先輩がずっとずーっと前からヴァイオリンを弾いていて、ハンブルクで演奏会が有った時には会って飲んではいたものの演奏会を聴いたことはなかった。
 とはいえウェブサイトにはどちらも売り切れと書いてある。そうでしょうともそうでしょうとも!どちらも伝統有る人気のオーケストラ。4・5日前にチケットが残っている訳がない。
 だがどちらも友人が手配してくれたッ!特にバンベルクの方はウェイティング・リストの3番目でチケットが2枚しか出ないから残念ながら…という連絡の数分後に、「2番目の人が要らないって!チケット有るよ!」との知らせを受け取り、要らないと言った2番目の人に感謝しながら会場にすッ飛んで行った。


 コンセルトヘボウのプログラムはモーツァルトのピアノ協奏曲第17番とブルックナー交響曲第7番。指揮は巨匠チョン・ミュンフン。ピアニストはこれまた巨匠エマニュエル・アックス。指揮者は前日に71歳の誕生日を迎えたばかりだそうだが若者の様に颯爽としており音楽も然り。しかし無駄なアクションは一切無く後ろから見ていると時々指揮をしていないように見える時も。隅々まで行き届いたフレージングにリハーサル中は厳しいのかな?と思ってヴァイオリンのJに訊くと、
「それが厳しくないの!ゲネプロなんて弦の序奏だけで、『いいね!』って辞めちゃったから管の人達が不安になって、『もっとやって下さい!』って言ったくらい。」
と意外な答え。でもそれでああいう演奏になるなら最高の指揮者ぢゃ〜ん!最も団員の能力が高ければこそだけど。
 ピアノのアックスはこれまでにも勧められながら何度も聴き逃して来た人。モーツァルトの協奏曲の中でも特に好きな17番だし開演前からのび太が冒険漫画を読む時のようなワクワク感。
 音色は明るく硬めで大理石を思わせる。とても75歳とは思えない鋭敏さとコントロール力!オーケストラの全てのパートを理解していてその中を自由に泳ぎ回っているよう。分散和音の部分も時には管楽器のように響く。


 凄く楽しかったッ!


 アンコールでショパンヘ短調夜想曲を演奏。楷書体でひとつひとつの旋律を丁寧に紡いで行く。前回のショパン・コンクールで拒絶反応が起きるほど聴いた左右時間差攻撃はただの1度も無かった。
 後半のブルックナーの第7交響曲は演奏時間1時間を超える大曲。長いと軽い気持ちでは聴けないからと敬遠しがち。そして敬遠して来たのは難解だからと1人勝手に勘違い。良いオーケストラでライヴで聴いたらどの瞬間も楽しくて!次から次へと新しい事件が起こる壮大なアメリカ映画のようだった。


 コンセルトヘボウだけで長くなったのでバンベルクは次回。