笑う伴奏生活

ハンブルクから愉快な共演者達を御紹介します。

リシャール=アムランを2度聴く(殆ど追っかけ)。

シャルル・リシャール =アムランの3月19日のパリでのリサイタルのチケットを取ってシューマンの幻想曲が聴ける~とウキウキしていたら、3日後の22日にポーランドクラクフラヴェルの協奏曲を弾くことが判明。
…第2楽章何が何でも聴きた~い!
その日のチケットも予約して間の2日間電車でフラフラとポーランドを目指すことにした。
パリでの演奏会前日の18日は中間地点のマンハイムに泊まった。食事を終えてホテルに帰ると金髪の小柄な女性がチェックインをしていた。
「◯ッキング.◯ムで予約した◯ローラ・シュ◯ットと申します。」
…◯ローラ・シュ◯ット!?私は彼女を知っているぞ!
ハンブルク音大の卒業生で、何度も一緒に演奏したソプラノ歌手だった。第1日目にして早くも楽しい出来事が。

翌日のリサイタル会場はフィルハーモニーホール。パリ高等音楽院の直ぐ近くで、生まれて初めて音楽院を見られるぞ~とニヤニヤしながら向かったら見事全館工事中だった…。

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会場のスタジオは全自由席で到着した地点ではガラガラ。彼ほどのピアニストでもパリではあまり人気が無いのだろうか…と思っていると開演5分前に正にワラワラと人がやって来て殆ど満員に。パリのお客さんの特徴だろうか。
演奏はどの楽章も最初の1音から最後の1音まで壮大な物語が語られているようだった。多くのお客さんが立ち上がって拍手を続けた。
演奏終了後はステージ後方のドア付近で簡単に面会が出来たのでソレッとばかりにマンハイムで買っておいたJeverを進呈。クラクフにも行くよ!と言うと、
ラヴェル初めてなんだ!」と答えてくれた。

翌日は移動に時間を割いてリンツまで。泊まって食べるだけの滞在だったがドナウ夜景は綺麗だった。

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そしてその翌日はチェコオストラヴァを目指す。乗換地のウィーンに住む女神(フルート・ルーマニア)に到着1時間半前にメールをするという甚だ迷惑な誘い方にも関わらずバイトを遅らせて飲みに付き合ってくれたッ!やはり女神!日本語が好きな彼女は現在妖怪漫画にハマっているそうです。

チェコ第3の都市オストラヴァでは市街地ではなく飲み屋街にホテルを予約。翌日のクラクフ行きバスを巡って右往左往した為観光は殆ど出来ませんでしたが、この地で没した作曲家ヤナーチェクの名を冠した音楽院と彼の胸像は見られました。

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チェコと言えばビール!この街の地ビール(その名もオストラヴァー)はしっかり頂きました。

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翌日苦労して手に入れたバスチケットを持って郊外の駅から乗車。チケット売り場のおばさまが、「本当に1番で良いのね?」と訊くのを『1人』だと思い込んでハイハイ言っていたら座席番号だった…運転席の直ぐ後ろ…。
クラクフに着くと流石世界遺産!あっちもこっちも目移りして中々前に進めない。でも先ずはホテルに行ってそれからチケットセンターで今夜のチケットを受け取らないと予約が無効になってしまうので散歩は後回しに。

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修学旅行生に侵略される詩人アダム・ミツキエヴィチ

開演より大分早めに2階ロビーに行くと壁1面にクラクフ・フィル歴代常任指揮者の写真が飾られていた。その中の1人にローランド・バーダーという名前を見つけた。
…忘れてたッ!私はこのオーケストラと一緒に弾いたことがあるッ!
12年前、クラクフ・フィルの函館公演でグリーグのピアノ協奏曲を共演させてもらったんだった…自分の記憶力の悪さに生きていくのがイヤになっていると何故かロビー脇のドアから正装したリシャール =アムラン登場。手を差し伸べて、「来てくれて有難う!ここのホール、構造が複雑で…。」と言いながらお客様用トイレに消えていった。

演奏は思った通り。特に期待の第2楽章では充実したひとつひとつの音が丁寧に繋げられ、整然としたフレージングが深い想いを淡々と語り続ける。来た甲斐有ったッ!
休憩中にリシャール=アムランに挨拶しようと思ったが彼も言った通りホールの構造が複雑で何処が楽屋だか分からず、オーケストラの団員もホールの係員も分からず、今日は諦めて帰ろうかと後半のルーセル交響曲を聴くのも辞めて(オケイマイチだったし…)表に出てホールの写真を撮っていたらリシャール=アムラン氏楽屋口から登場。

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「どうだった?オケイマイチだったよね。」と正直に言うから私はこのオケのもっと酷いの(私と一緒に演奏した時)を知っているから今日はマシな方だよと正直に答えた。
「僕は自分の演奏に好きじゃない所が沢山有るんだ。第2楽章は良かったと思うんだけど…だから君みたいに度々聴いてくれる人の意見はとても大切なんだ!」
と言われた。
今後も心して聴かねば…。

オストラヴァーを進呈すると、「チェコのビールは美味しくて安いよね!」と喜んでくれた。
次回の欧州での演奏会は8月にポーランドで。本人が誘ってくれたんだから絶対行きますよ~!

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