笑う伴奏生活

ハンブルクから愉快な共演者達を御紹介します。

不思議な学生の話

 2月16日、ドアマン先生(フルート)クラス学内演奏会。新入生が2人(内1人は日本から久々のフルーティスト!)で総勢5名。

 先生が精神安定剤のような人なのでクラス内にも特に問題児はおらず…みんな精神安定しすぎぢゃねェか?と思う程演奏会が近づいてものんびりしている。


 中でも合わせの回数が少ないのがJ1(韓国)。彼女はちょっと面白い存在で以前も演奏会直前のレッスンで1度一緒に弾いただけで後はピアノ 合わせを一切せずに本番に臨んだことがある。ちゃんと吹いたがちょっと心配した。
 今回はリズムのかなり複雑なムチンスキーのソナタの第1楽章を吹くのにやはり本番1週間前のレッスンまで連絡がない。ところが先生が病気になってその日は先生ナシで合わせをすることになった。
 今まで同様に直前まで合わせず直前に泣きを見た学生を何人も見て来たから、今日全然ダメだったら…と頭が痛い。
 ところが全く問題ナシ。しかも必死で数えているのではなくちゃ〜んとピアノ パートを理解している感じ。確かにちゃ〜んと準備が出来ていて不安もないならば何も頻繁に合わせに来る必要もない。
 しかしこういう学生には滅多にお目にかからない。友達に良く一緒に弾くピアニストがいるの?と訊いてみたら、
「いえ、いません。」
ぢゃあいっぱい動画を観ているの?と訊くと、
「動画は全然観ません。」
ときっぱり。彼女の物言いにはポリシーすら感じられた。昔サンタ先生のクラスに、
「僕はYouTubeを沢山聴きましたがみんなこうやって吹いていました。」
と言った馬鹿者がいたが、対極である。
 翌週演奏会前日のレッスンでドアマン先生が、
「ムチンスキーの第4楽章もやろうかと言ってるんだけど…。」
と言う。普段なら前日になってとんでもない!と却下するところだが彼女なら全く問題なく出来る気がしていきなりその場で合わせてみた。


 …やっぱり全然問題ナシ。


 翌日は両方ともばっちり。不思議な人だ。