笑う伴奏生活

ハンブルクから愉快な共演者達を御紹介します。

ザンデヴァッタとは誰であろうか…

「試験前日はファーレンドルフでの演奏会には出ずに調整したい。」と言っていたザンデヴァッタ君(オーボエ・韓国)ですが、ほんの数日前の最後のレッスンで姐御(フルート・ドイツ)との2重奏を聴いたB先生が、「やっぱりファーレンドルフでこれ吹きなさいよ。吹いた方がいいわよ。」と臨機応変に意見を翻して、姐御共々参加した翌日が彼のソリストコースの卒業演奏会。

修士課程からの入学で、その頃我が音大ではフレンドリーなS(ホルン)、尊大なJ(オーボエ)と悲しそうなY(ファゴット)の何れも韓国からの留学生がいて、オーボエのNさんが彼をして、「SとJとYを足して3で割ったような人ですね!」と称した。
さて初めて彼の合わせの日程をカレンダーに書き込む段になって彼の名前が分からない。韓国人の名前はローマ字にすると時々かなり複雑なのだ(因みに彼の本名はSeokyeonである)。私はNさんの命名を思い出して、「Sandewatta」と書き込んだ。
ドイツ人の名前に見えないことも全く無いとは必ずしも言えないのである。暫くしてカレンダーを眺め、今日5時から合わせをするザンデヴァッタとは一体誰であろうかと頭を捻り、やっと3で割った君だと気付いた時私は幸いにも誰もいない練習室で暫くの間1人笑い転げた。

「ノブエサーン!修士課程の卒業演奏会の日決めましたー一緒に弾いてー!」
「もちろーん!1月24日以外ならいつでも出来るよ!」
「あーん1月24日だー…。」
という恐ろしく運の悪い人でもある。あの時はB先生も、「貴方が出来なくて残念だった。本当に残念だったわ。」と繰り返した。

学内演奏会での演奏がとても良かったのでB先生にやっぱり卒業演奏会でもやれと言われてやったブリテンの現代的変奏曲は落武者先生が思わず立ち上がって拍手をする素晴らしい出来。彼も後は9月の非公開試験を残すのみとなりました。